ファミマのファッションショー分析特別寄稿

ファミマはコンビニ業界初「ファッションショー」をなぜ開催? 小売マーケの第一人者が勝手に分析

 

観点2:ファミフェスをブランド強化(=ブランドを好きになってもらうきっかけ)と捉えてみる


 人が買い物をするとき、選択・意思決定の理由になることは、

(1)馴染みがあるから
(2)良いから
(3)好きだから

 この3つに集約されます。詳しくは、以下の別記事をご覧いただければと思います。

 参考:マーケティングだけ勉強しても、マーケティングできるようにならない~その(4)~

 これをコンビニに当てはめて考えてみると、(1)の馴染みについては、大手コンビニ3社ともまったく問題なく、(2)の良いについては、大手コンビニ3社が苛烈な競争をしている状況です。どこかがATMを導入すれば自分たちも導入する、淹れたてコーヒーも同様に導入する、惣菜の美味しさ、といった点についても各社しのぎを削っています。たとえば、ある特定のPB(プライベート・ブランド)商品が欲しいから最寄の他店ではなく500m離れたコンビニに行く、といった判断にはなかなかなりません。

 では(3)の好きについてはどうでしょうか? インターブランドジャパンが2023年2月16日、日本発ブランドの価値ランキング「Best Japan Brands 2023」を発表したランキングを見ると大手コンビニ3社は21~80位にあり、いうまでもなく3社ともブランドを確立している状況ではあります。しかし、上記のおいしさの話と同様、ある特定のコンビニが好きだから最寄りではなく離れた方にいく、という判断にはなかなかならないのではないかと思います。

 筆者は、ファミリーマートがファミフェスを実施した狙いに「好き」をつくる強化があるのではないか、と思います。こちらの動画をご覧になってください。
 
ファミフェス ダイジェストムービー

 私が特に注目したいのは、青と緑、つまりファミリーマートのブランドカラーをたくみに取り入れてスタイリッシュに仕上げられたアイテムの数々です。これはステージ上のプロトタイプ店舗のカラーリングとコーディネートされ、ファミリーマートブランドに洗練されたイメージを付加することに成功していると感じます。

 このカラーリングが使われている商品が衣料品だけでないことにも注目していただきたいと思います。ウーロン茶や文房具など、このカラーを使うことにより「他でもないファミマ」の商品として、ファミリーマートの品揃えに、ひいてはファミリーマートのブランドにファンション性を付加しています。
  
ファミリーマート限定 オリジナルパッケージのサントリー烏龍茶


ファミリーマート×KOKUYO共同開発の文具

 また、ステージ上では、色々な人が胸を張って歩いたり、ファミチキを食べたりしていた演出にも注目です。衣料品の買い場としてのショッピングミッションと、コンビニの主戦場である今必要なものというショッピングミッションの双方が、同じ場所でスタイリッシュに共存していました。そのことで、ファッション性を高めながら「ケの日(日常)」のニーズから遠ざかることなく、コンビニとしての存在意義を拡張していこうという意図が見て取れました。

「色々」な人の、「色々」というポイントにも注目です。ブランド構築を考えるとき、ともするとターゲットを絞ることを考えがちですが、これはコンビニやスーパーのような小売では禁物の考え方です。若い女性をターゲットにした品揃えなどされた日には、筆者が好きな焼酎が買えなくなってしまうではありませんか。

 一方で、店頭には無限の品揃えはできないので、何らかのフォーカスをする必要があり、その軸になるのがショッピングミッションである、というわけです。まさにファミフェスもターゲットを人で絞るのではなく、ショッピングミッションでブランドとポジショニングを組み立てる構造になっており、高い戦略性を感じます。

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