国連難民高等弁務官事務所の広報日記 #03
大坂なおみ選手「I’m sorry」の誤訳から考える、「伝え方」の難しさ【UNHCR 守屋由紀】
大坂選手が発した「I’m sorry」の意味
連載が始まって今回が3回目。意外なところから「読んでるよ」と言われることがあります。先日も私の母校・獨協大学のマスコミ同窓会の席で、新聞、テレビなどで活躍している先輩や後輩から、このコラムについて応援の言葉をいただきました。繰り返しになりますが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の広報として果たす主な役割は、「難民」と「UNHCR」について多くの人に知ってもらうことです。この小文が現在、世界中で7000万人を超える難民や国内避難民などについて皆さんに考えていただく機会になっていることは、とてもうれしいことです。
今回は、「伝え方」についてお話したいと思います。それは最近、「伝え方」について考えさせられる“事件”があったからです。
全米オープンテニスで優勝した大坂なおみ選手の件です。
彼女はハイチ系米国人の父親と日本人の母親の間に産まれ、3歳のときに渡米しました。NHKの番組で、彼女の特集を見て思いましたが、英語の発音や話している内容を聞き、どこにでもいる“フツーの米国のお嬢さん”という印象を得ました。
全米オープンの決勝で対戦するセリーナ・ウィリアムズ選手はミスを連発する自身のふがいなさに腹が立ったのか、感情を乱し審判への暴言などで減点。平常心で戦った大坂選手に勝利の女神がほほ笑みました。
ところが世界4大大会の栄冠を初めて手にした20歳にコートで観戦していた観客はブーイングを浴びせます。セリーナびいきが過ぎたのか、それともふがいない試合ぶり、厳格な審判に対する不満なのか。そこで涙ながらに大坂選手が言いました。
「I’m sorry it had to end like this」
彼女がこの発言で伝えたいことは、何だったのでしょうか?
日本のメディアはこう伝えました。「大坂選手が謝罪」。さらに謝罪したことは「日本人のおくゆかしさ」だ、と。
問題は「I’m sorry」の意味です。「I‘m sorry」には、3つの意味があります。「ごめんなさい」、「お気の毒に」そして「残念です」。彼女がこの言葉を発する前の文脈、雰囲気、表情から考えて大坂選手の「I’m sorry」は、「こういう結果になってしまって残念です」でしょうね。
これは「メディアリテラシー」の問題とかかわっています。
「メディアリテラシー」とは、テレビやインターネット、新聞など出版物など世界中にたくさん発信されている情報を読み解いて、情報を理解する能力のことです。
日本の一部メディアの情報を鵜呑みにした人は、「謝罪した大坂