アクセンチュア・ライフ・トレンドにみるマーケティングの指針
アクセンチュアが5つの生活者トレンドを発表、マーケティング目線で見えてきた「本物さ」の希求【解説:オイシックス・ラ・大地 奥谷孝司氏】
多様化する顧客理解とLTV向上のカギはcLTV?
2月29日に行われた記者会見では、Accenture Song執行責任者 兼 コンサルティング部門日本統括 マネジング・ディレクター 木原久明氏(上の写真右端)ら3人が登壇した。木原氏は「AIは極端な言い方をすると究極の模倣」と表現。今後、日本企業はテクノロジーによる「効率化と同質化の矛盾」を乗り越えながら、「『十人十食』ではなく『一人十色』の顧客が持つ多様な価値観に応えるチャレンジが必要になる」と指摘した。
方策として同社が提示したのが「cLTV(Customer Life Time Value)」だ。自社が顧客からどれだけの利益を得たかを測る「LTV(Life Time Value)」が「企業目線」とすれば、cLTVは顧客が商品やサービスの体験を通じてどれだけの価値を体感したかを測る「顧客目線」のKPIだという。顧客体験にかける費用を「コスト」でなく「投資」と捉え、LTVとの高速回転を回すことでcLTVを長期的に蓄積すべきと提言した。実装例として、サラダ専門店「CRISP SALAD WORKS」が顧客満足度などのcLTV的指標と売上などLTV的指標のデータをリアルタイムで収集し、各部署が施策検討に活用している事例などを紹介した。
質疑では、会場の記者からcLTVについて質問が飛び、木原氏らは「C X(顧客体験)を重視する経営は踊り場に来ており、ビジネスとどう繋げるかという課題に対してcLTVを検討する企業は増えている」と説明。目指す方向性やデータの蓄積状況によって算出方法や実装にかかる期間は異なるとして、「NPS(ネットプロモータースコア)など既存の指標と紐付けながら高度化していく取り組みになるのでは」と語った。また、顧客の多面性を理解するために、自社データにとどまらず提携先からも多面的に集めるといった「テクノロジーの下支えも不可欠」と指摘。テクノロジーによって浮いた時間を創造的な仕事に向けるための投資も重要と語った。