TOP PLAYER INTERVIEW #66
資生堂がマーケティング組織を改編、生活者とブランドが共創する時代の「最適なチームの在り方」
資生堂らしい価値を提供し続ける組織に
――貴社はサステナビリティにも注力しています。新たな組織改編を経て、今後どのようなことを提供していきたいと考えていますか。
サステナビリティの観点からも、長くお客さまに愛されるような「ヒーロープロダクト」を提供したいと考えています。たとえば、ミツカンさんのポン酢や日清食品さんのカップラーメンは、時代に合わせて使い方を提案したり、時代の変容に合わせてコミュニケーションすることで、多くの人から愛されているロングセラーブランドですよね。ただ、提供するメインの価値はずっと変わりません。そのようなブランディングは、化粧品でもきっとできるはずなんです。
時代のトレンドもあり、技術も進化し続けるので、もちろん新製品が必要な場合もあります。しかし、次々に新製品を出さずとも、コミュニケーションをイノベーションすることで価値を届けていきたいというのが全社的な想いです。そこを目指して、ブランドマーケティング、メディア、そしてPRのチームが一緒に動いていくことが期待されます。
実は組織改編の前にも、プロジェクトという形でコミュニケーションのイノベーションを行ったことがありました。ELIXIRの「リンクルクリーム」が2017年に大ヒットしたのですが、別の新製品の発売によってプロモーションに手をかけられなくなり、一時的に売上が落ちてしまったんです。
そこで、ブランドやPR関連部門、研究所などでプロジェクトチームを組成し、いまの生活者の肌の悩みがどう変化しているのか、インサイトをあらためて捉え直しました。こうしてコミュニケーションのコンセプトを刷新し、新たに「速攻ケア」というメッセージを打ち出したことで、売上が回復し、シワ改善薬用化粧品で6年連続売上1位を獲得することができました(※1)。
当時は一時的なプロジェクトという形でしたが、これからはワンチームとして定常的に動くことで、コミュニケーションのイノベーションを連続的に起こし、新しい価値を生み出していきたいですね。
――今回の組織改編に伴って、新たなマーケティング戦略などの計画や、今後注力される領域があれば教えてください。
資生堂は、スキンケアの技術が大きな強みです。実際、化粧品技術を競う世界最大の研究発表会「国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)」で、世界の化粧品メーカーの中で最多受賞回数を誇っています。コロナ禍で変化する生活者のインサイトを捉え、スキンケア技術の強みを生かした「美容液効果のあるファンデーション」を販売したところ、ヒットさせることができました。SNSでも「まるで色付き美容液」と話題になっており、“ファンデ美容液”という新しい市場をつくることができました。
こうした資生堂の強みのあるドメインで新市場をつくっていけば、今後もサステナブルに価値を提供し続けられるはずです。「オールインワン」や「ノンシリコンシャンプー」も、これまでまったくなかったプロダクトではありませんが、少し新しい視点や価値を加えることで独自の市場を確立することができました。私たちもユニークな価値を加えて、新しい市場をつくっていきたいと考えています。
※1:インテージSRI+基礎化粧品(スキンケア) シワ改善市場メインシリーズランキングにおける売上2017年6月~2023年5月 推計販売金額
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