アクセンチュア・ライフ・トレンドにみるマーケティングの指針
アクセンチュアのトレンド調査が提唱「cLTV」には、飾りではない具体的で現実的な方法論が求められる【解説:Repro 中澤伸也氏】
顧客は昔から多様。変わったのは「選択可能になった」こと
これを行うために必須となるのが、続く2つ目。顧客が「なぜ、貴方のサービスやお店を利用し続けてくれるのか」、その理由の「解明=言語化」である。
この「利用し続けてくれる理由」こそが、貴方のサービスの「ブランド価値」であり、「マーケティングの4Pの軸」になるものである。
つまり「最重要な顧客」の期待を裏切らない、もっと喜んでもらうためにはどうするかを追求し、MD(製品開発・品揃え)戦略、ブランド戦略、売り場づくり(ECの商品露出計画も)、プロモーション、CRMを構築していくという考え方である。
これは決して「既存のお客さまだけを大事にしよう」ということを言っているのではなく、「貴方のサービスの良さに共感してくれる人」を市場から獲得することに集中し(新規集客)、その顧客の期待に応え続けることで、よりサービスを利用してもらう(LTVを向上させる)ということである。
しかし、この実現のためには「リソースや資源の制約」という問題が立ち塞がる。それをカバーするために「テクノロジーによる効率化」、つまり3つ目のキーワードが必須となる。
体験型ビジネス以外の領域においては(たとえば一般小売業)、顧客は自らの目的をいかに効率良く達成できるかを現実的には重視している。特に可処分時間の奪い合いが起きている現在においては、よりその傾向は顕著であろう。
出典:123RF
よってテクノロジーにより、いかに顧客にスムーズに目的を達せられるようアシストするか。そして体験の小さなつまずきが発生することを、いかに「先回りして解決できるか」が重要になる。これらは顧客体験の向上につながるだけでなく、コールセンターへの問合せ削減などの、希少なリソースを保護する上でも重要だ。
これらの領域では今後、よりAIの役割が重要になっていくものと思われる。 しかし、顧客がそのサービスに決定的な愛着を持つに至るには、いわゆる「真実の瞬間」的な場面が必要となる。それは他社では提供されない特別な「体験」であったり、自己解決できない「問題」であったりが、特に重要な対象となりやすい。
テクノロジーによって、ある意味サービス等が均質化していく中で、あえて非効率で人的労力がかかる(だからこそ他社がやりたがらない)、コミュニケーションやサービスを「真実の瞬間」に当てることができれば、顧客満足に決定的な影響を与えることができるだろう。
つまり「ひとけ(人気)」をどこに使うか、この選択精度をいかに上げるかが、LTVにおいて重要と考えている。 最後に。重要なのは「抽象的な概念や、壮大なピクチャー、バズワード」ではない。リソースもお金も時間も、全ての経営資源が限られている中で、cLTVという当たり前の経営最重要指標をどのように向上させていくのか。そのための「具体的な、現実的な、方法論」と「実現体制の構築」である。
実は顧客は昔から「多様」であった。変わったのは「選択肢」が増え、情報が増え、顧客と企業が相互に「選択可能になった」という点だけである。ただ、経営を取り巻く環境は変わった。明らかなリソース不足、競合の増加、テクノロジー環境の激変。このような中、あらためて「顧客戦略」を考え直す必要性に企業は置かれていること自体は間違いないと思う。
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