新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #07

「新しい学校のリーダーズ」はデビュー8年でなぜヒットした?アソビシステム代表中川悠介氏が明かす「クリエイティビティ・ファースト」な裏側

 

組織力のK―POPに対抗する「クリエイティビティ」


徳力 セールス以外の価値を上げていくことは重要ですね。今は個人の時代だからこそ、個人がそれぞれよく考えて決めなければいけない。そして同様に、組織も個人に選ばれる存在でいなければいけませんね。アソビシステムではアーティストごとに打ち出し方の違いが際立ち、単純な横展開がないと思いますが、中川さんの中には「アーティストを自分流に染めたい」という思いはないのですか。
 
noteプロデューサー/ブロガー
徳力 基彦 氏

中川 そういった発想は全くないですね。組織の存在意義については、僕はなんとなく「アソビシステムがやる意味とは何か」を考えます。僕自身に能力はないので、能力と能力をくっつけるのが仕事です。その時、先ほどお話しした「面白い子を見つけてきて掛け算する」ということになるのですが、それはプロデュースという名で、彼らの才能と自分たちのプロデュース力とを引き合わせることでもあるのです。

徳力 SNSの利用についても、従来の日本の芸能事務所は「危険だからアーティストにSNSは触らせない」とか、特定のイメージを崩さないように過剰なほどに守ってきましたが、アソビシステムのアーティストはSNSを使ったセルフプロデュース力が高いように思います。

中川 アソビシステムのアーティストは「自分」を持っているので、SNSについても自発的に動く人の方が多いですね。「守る」必要もあまり感じていません。少し話がそれますが、これまでの日本は、たとえば業界団体のようなものをつくって「権利を守る」ことでビジネスをしてきたと思います。けれど今、世界は「権利を使って勝つ」時代に変わった。その時代に勝っていくために、SNSやTikTokをやるのは当たり前で、使わない手はないと考えています。ただ、それも大人がつくるものではなく、嘘ではない本人たちの言葉で発信していくことが大事です。僕には、アーティストを抑え込んで何かを作り出していくということはできないので、引き出して応援していきたいのです。

徳力 やっぱりアソビシステムが、最初から中川さんの「イベントが好き」とか「アーティストへのリスペクト」を原動力に始まっていて、トップダウンでコントロールするのではなく、応援するための事務所であるということが、アーティストに責任感を持ったセルフプロデュースを促しているのでしょうね。新しい学校のリーダーズも売れていない時期から模索し、日本でまだそこまで普及していなかったTikTokを真剣にやっていたことがブレイクにつながりました。

中川 そうですね。「新しい学校のリーダーズ」は僕が見ていても、こんなに才能があるってすごいなと思います。世界が彼らに気づいてくれて嬉しいです。8年もかかってTikTokでブレイクするなんて、夢があるじゃないですか。
  
新しい学校のリーダーズ © 2024 mayakuraki

徳力 これは永遠のテーマだとは思うのですが、プロデューサーとしてヒットを出す確度というのはどうしたら鍛えられるのですか?

中川 いや、僕なんてそんなにヒットを出せていません。だけど、自分たちの中でやっぱりファーストに尊重しているのがクリエイティビティです。良いものをつくった後、それをどう広げるかは、きゃりーのYouTubeだったり、新しい学校のリーダーズはTikTokだったり、変わっていきます。だからこそ、最初に良いものをつくるということが一番大事だなと思っています。

K-POPはとても組織化されていて素晴らしいと思っていて、以前「KCON」(K-POPやドラマ、フード、美容などの韓流文化コンテンツが体験できるコンベンションとコンサートを融合したイベント)を見た際には、すごい衝撃を受けました。今後、日本がそれに対抗していくにはクリエイティビティ、つまりオリジナル性を伸ばしていくことがカギだと思います。僕も負けたくない気持ちがあるので頑張っていきたいです。

徳力 本当に今は、日本のカルチャーに世界的な関心の流れが来ていると感じます。僕は、中川さんがKCONならぬ「JCON」を実施してくれるものだと思っていますので。

中川 ありがとうございます。自分がやるべきだと思っていますし、やらなければならないと思っています。
  
他の連載記事:
新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ の記事一覧
  • 前のページ
  • 1
  • 2

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録