TOP PLAYER INTERVIEW #69

人気ゲーム『桃鉄』学校への無償提供でα世代を取り込む、累計販売本数400万本突破に隠されたマーケティング戦略

 

不登校児童が『桃鉄』をきっかけに教室に。ゲームの力を確信した瞬間


 従来の「桃鉄」シリーズに使用される漢字は、第1作の発売当初から小学4年生程度が読めることを想定されている。また、現在の小学校の社会科のカリキュラムにおいても、日本の地理について学ぶのは小学校高学年からであるため、「桃鉄 教育版」は小学4~6年生の社会科で活用されることが中心になっている。しかし、実際の学校教育の現場での活用の幅はもっと広い。

 たとえば、地名の難読漢字を学ぶ「国語」の授業、利益率や収益率の計算など「算数」の授業に加えて、「金融教育」なども考えられる。さらに、クラスマネジメントの一環で、ゲームを通した交流を目的に「桃鉄」が用いられることもあるようだ。特定の授業の、特定のカリキュラムの副教材として活用するという、あえて限定しない方針を取ったことで、さまざまな活用方法が生まれている。

「桃鉄 教育版」のリリース後、学校からの反響は上々だ。「そもそもゲームは親に隠れて、こそこそ遊ぶものだと思って育ってきた」という岡村氏は、学校教育側から好意的に受け止められたことに驚いたという。

「正式リリース前に一部の学校で試験導入をしていただきました。そのとき、不登校や保健室登校の状態にある子どもたちが、『桃鉄 教育版』を活用した時間には教室に入って授業を受け、他の子どもたちと一緒に楽しむことができたと伺いました。ゲームの力を実感して本当に嬉しかったです。その話を聞いて、自信をもって正式リリースできると確信しました」と岡村氏は語る。

 初年度だけで、日本全国の教育機関7000校に導入され、小学校に限ってもすでに4000校以上が導入済みになる。これは全国の小学校の約20%にあたる。
  
枚方市立小倉小学校のプレゼンテーション。地域全体で公平な学習を実現するため、教育委員会からの一括申し込みも受け付けており、枚方市では、いちはやく導入が始まった

「大阪府の枚方市立小倉小学校では、2024年2月7日に同校の6年生が、最新作『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!』の監督/ゲームデザインの桝田省治さんや私に向けて、『桃鉄に枚方を追加してもらおう』というテーマでプレゼンテーションをしてもらいました。枚方は『桃鉄 教育版』の駅として収録されていなかったので、枚方の魅力を全力でアピールしてもらいました。探究的な学びや、強化横断学習の入口として『桃鉄』を活用いただいたようです」(岡村氏)

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録