TOP PLAYER INTERVIEW #69

人気ゲーム『桃鉄』学校への無償提供でα世代を取り込む、累計販売本数400万本突破に隠されたマーケティング戦略

 

初期版よりも近年の『桃鉄』の方が売れている。その理由とは?


「桃鉄 教育版」の元となった『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』の累計販売本数(ダウンロード含む)は400万本以上にものぼる。これは35年以上の桃鉄の歴史上でもずば抜けて多い数値だ。最新作である『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!』もすでに累計販売本数(ダウンロードも含む)100万本を超え、ここ数年で売上拡大のペースが大きく上がっているという。
  

 その理由について岡村氏は「影響のひとつとして配信文化の浸透があります。ゲーム配信がブームになり、文化といえるレベルにまで普及しています。『桃鉄』のゲーム配信は、配信者たちが『貧乏神がついた!』『スリの銀次に10億すられた!』などと言いながら、深夜にお酒を飲みながら朝までプレーする様子などをYouTubeなどで公開していて、非常に楽しそうです。画面の片隅に表示されるワイプ画面で配信者たちが笑いながらゲームを楽しんでいる様子が伝わってくるので、視聴者やユーザーが増えていくのではないかと考えています。狙っていたわけではありませんが、『桃鉄』のゲーム特性と配信文化がいまの時代にマッチしたのだと思います」と語る。
  
お笑い芸人の陣内智則氏、野性爆弾のロッシー氏、ライスの関町知弘氏が『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』で対戦プレーでLIVE配信を行なっている様子

 ゲーム配信は、視聴者に「桃鉄」の原体験を想起させる一因となっている。正月など家族や友人と集まってワイワイ遊んだ体験は他のゲームにはあまり見られない、「桃鉄」ならではの景色なのだ。桃鉄に登場するキャラクターのIPについて「桃鉄はキャラクターでファンがついているゲームではない」と岡村氏は言う。桃鉄の魅力は、あくまでも社長となった自分が総資産額日本一を目指す過程での「体験」なのである。
  
『桃太郎電鉄 教育版Lite~日本っておもしろい!~』の資産表示画面。右側に学習機能が追加されている

「よいものつくっていたら売れる時代は、昭和の時代に終わっている。現代は一つひとつのタイトルを新規事業のようにゼロベースで考えて届けていくことを考えることが重要です」と語る岡村氏。それは35年の歴史を持つ「桃鉄」であっても例外ではない。

 マーケティングにおいて、岡村氏が常に意識していることがある。それは施策を行うときの「消費者からの捉えられ方」であり、これを常に自分に問いかけ続けている。

「まず受け取り先を考え、その上で『だからこうする』と施策を展開させます。自分がやりたいことをいくらやってもダメなのです。だからこそ、『桃鉄』以外の『ボンバーマン』や『メタルギアソリッド』といったIPを扱ったタイトルでも、ある程度結果を出してこられたのではないかと思います」と岡村氏が手掛けた過去のタイトルでも、消費者のことを考えて制作されていたことが伺える。

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