CATCH THE RISING STAR #05

フェリシモで若年層向けメディアを立ち上げ、収益化模索する若手マーケター【松本美卯氏】

 

「個人の思いに共感が集まる場所」へ


―― 新メディア「このごろ」は、どう収益化に繋げていくのですか。

 2つの軸があると思っています。ひとつはECサイトとしての機能で、第一弾として大阪市内に店舗がある「NITO Coffee & Craft Beer」さんとコラボして、ディップタイプのコーヒーを販売しました。「仕事で怒られちゃったあとに飲むコーヒー」とか「早起きできた朝に飲むコーヒー」など、飲用シーンを具体的に想起できるようなオリジナルパッケージをつくってもらい、コットンの巾着を付けるなどこだわりました。サイトでは、これらのコンセプトや制作背景を丁寧につづった記事を掲載し、記事を読んでいった先で、自然と購入したくなるような流れを意識しました。

 一商品を深く掘り下げることは、ECサイトとしては非効率的かもしれません。ただ背景には、商品によってお客さまにどんな感情を抱いてもらい、どう暮らしを彩れるかという、フェリシモが重視する「経験価値」を伝える意図があります。特に「このごろ」は「個人の思いに共感が集まる場所」を意識していて、そもそもNITOさんのコーヒー販売も、チームスタッフがこちらのコーヒーを好きだったことから企画が始まっています。商品企画についてはもちろん、さまざまな意見を聞いて検討しますが、市場調査に基づいて「若者にこれが流行っているからこれを売ろう」というのではなく、実際に若者である私たちが、他人は関係なく本当に好きなものをご紹介して、共感していただけるような商品展開を目指しています。
  

 もう一つの収益化の軸は、若者のPVを伸ばすことです。若年層が多く読んでくれれば、広告やPRの場としてのメディアとしての価値も出てきます。フェリシモのメインのECサイトは主要顧客である50~60代の方々がご覧になりやすいように設計されているので、「このごろ」は、20代の方々がフェリシモの世界に触れる入り口になってくれれば、とも考えています。

―― どんなことに課題を感じ、どう乗り越えようとしていますか。

 入社してからはガムシャラに目の前のことに向き合ってきましたが、最近はようやく一歩引いて、自分に足りていない部分が見えてくるようになりました。DMでもメディアでも、商品の本質的な価値、あるいは企業や自分、商品に携わった人の思いなどを「伝える」ということの難しさを痛感しています。

 たとえばおすすめしたい掃除用品があって、自分で実際に使ってみると便利さを体感できても、直に感じた「衝撃」みたいなものを、言葉に変換するのは非常に難しいです。SNSでバズった商品も本質的な価値が伝わっていないと、リピートには繋がりません。

「このごろ」のアプローチは、そのような課題に対するひとつの答えのように感じています。市場調査による客観的なデータをもとにコンテンツを考えたり、商品を企画したりすることももちろん重要ですが、「好き」だとか「つらい」といったシンプルな感情を大切にして、リアルな体験を言葉にする方が、共感を得られやすいのではないかと思います。

 そのため普段から、表現物が心に刺さる瞬間に対して敏感でいるように意識しています。電車の中吊り広告や、テレビやYouTubeのCM、雑誌。書店にも頻繁に足を運び、どういう雑誌や書籍が目立つのか、手に取りたくなるのかを観察するようにしています。

 ほかにも、オンラインの編集講座を自主的に受講したり、フェリシモ社内のチェロやフットサルなどのサークル活動にも積極的に参加したりして、新しい情報や刺激をインプットするよう心がけています。

―― 目標を教えてください。

 短期的にはDMやメディアを通して、価値や思いを「伝える」ことに注力したいです。特に「このごろ」は、多くの若者に読んでもらえて役立てるメディアを目指すことで、収益化に向けた基盤づくりにも取り組みたいです。

 長期的には、入社動機としても少しお話ししたように、社会課題の解決や幸福に貢献することができたらと願っています。フェリシモは、たとえば北海道の旭山動物園と連携して、基金付き商品によって自然保護を支援する活動なども行っています。社会課題解決に向けて頑張っている方々とつながることで、成果をより高めていくことが、フェリシモなら出来るのではないかと考えています。
 

【上司の視点】「意思あるもの」を生み出す力に期待

 
フェリシモ 次世代定期便開発室長
下崎 顕司氏

 同世代に向けたコンテンツ制作や商品企画において、ネットなどでリサーチした情報をうのみにするのではなく、自分自身の感覚を信じて納得がいくまで考える姿勢に魅力を感じています。彼女の創造力はもちろん、ポジティブな姿勢がプロジェクトの推進力となり、次世代の「定期便」に革新的な価値をもたらすこと、表面的ではない、ちゃんと意思のあるものを生み出してくれることを期待しています。
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