CATCH THE RISING STAR #07
資生堂「エリクシール」の若手マーケター 生活者視点とデータ活用に奮闘【今井静香氏】
企業におけるマーケティングの重要性が増す一方、「マーケターの仕事は生成AIに奪われるのではないか」とも囁かれる昨今。そんな時代の変革期に、マーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカスしたAgenda noteの本連載。彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第7回に登場するのは資生堂ジャパンの入社4年目、今井静香氏。マキアージュやエリクシールといった馴染み深いブランドのプロモーションを手掛けながら、生活者視点とデータ活用の両立に奮闘する若きマーケターに迫った。
「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカスしたAgenda noteの本連載。彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第7回に登場するのは資生堂ジャパンの入社4年目、今井静香氏。マキアージュやエリクシールといった馴染み深いブランドのプロモーションを手掛けながら、生活者視点とデータ活用の両立に奮闘する若きマーケターに迫った。
外見だけではない化粧品のパワー
―― なぜ資生堂に入社したのですか。
ひとつ、明確な体験があります。私は中高生の頃はあまりメイクをしたことがなく、大学生になってメイクが好きな友人からいろいろなアイテムを紹介してもらうようになったんですが、なかなか自分の肌に合うものが見つけられませんでした。
2年生になって、母から資生堂のインテグレート「水ジェリークラッシュ」というクッションファンデーションを教えてもらいました。肌への負担を感じないのにしっかりカバーしてくれて、肌が変わる体験をしました。ベースメイクが変わるだけで朝の準備が楽しみになり、一日が元気に過ごせるようになり、メイクの話を母とするようにもなりました。これをきっかけにメイクって楽しい、本当にパワーがあるんだなと実感し、資生堂や化粧品メーカーを意識するようになりました。
就活では、自分もまた誰かの心を動かすものに携わりたいと思ったので、最初から化粧品メーカーに絞っていたわけではありませんが、幅広い企業を調べるうちに、資生堂のミッション「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」に出会いました。ブランドムービーなども見て、美しさについて「こうでないといけない」と押し付けるのではなく、それぞれの人がなりたい自分やなりたい美しさに向かうことを後押しする、という考え方に惹かれました。
今井 静香 氏
資生堂ジャパン
エイジングケアマーケティング部 エリクシールグループ
アシスタントブランドマネージャー
資生堂ジャパン
エイジングケアマーケティング部 エリクシールグループ
アシスタントブランドマネージャー
化粧品って日常的に使うものだから、あまり考えずに手頃なものを買うことも多いと思います。でも、ちょっとメイクがうまくいったとか、肌が綺麗になったという体験で前向きな気持ちになれるし、元気になることもありますよね。化粧品には外見を変えるだけではないパワーがある。自分の経験からもそのことを痛感していたから、化粧品の力で社会を変えていくことを掲げる資生堂のミッションがいちばんしっくり来て、入社の決め手になりました。
実際入ってみると、社員もブランドも多彩で、自分たちがこの業界をリードしていくんだという気概も感じました。そうした大企業ならではの魅力もある一方で、先ほども申し上げたような、それぞれの考え方や自由を尊重してくれる風土もあり、バランスがいいなと感じます。
―― これまでのお仕事内容を教えてください。
マーケティング職として入社して、マキアージュのカレントグループという部署に在籍してプロモーションを担当しました。今年の1月にエリクシールグループに異動になり、ここでもプロモーションを担当しています。
業務内容としてはまず、担当アイテムの半期の総合的なプロモーション戦略を策定します。どんなターゲットにどんな気持ちになってもらいたいか考え、リリースを出すタイミングや、「美容賢者」と呼ばれる美容に詳しい方々にどう関わっていただくか、店頭・デジタルでのプロモーションをどうするかなどを検討します。そして半期の戦略が決まったら、テレビCMや駅の広告、動画広告の配信やインフルエンサーの方とのタイアップなど、個々の施策の実行を進めます。
―― ステークホルダーが多く、新人が意見を反映させるのは難しい場面も多かったのではないでしょうか。
おっしゃる通り、マーケティングチームは営業担当や、デマンド部門、クリエイティブ関係の部署、あるいは社外の方など、さまざまな関係者との協業が多いです。一緒に商品を広めていくための議論を進めるハブのような存在だと思っています。個人的には、協業する皆さんが前向きな気持ちで取り組めるよう、コミュニケーションの仕方を工夫したり、目指すところをオープンに伝えて協力を仰ぎやすくしたりするよう意識しています。
大人数が参加する会議などでは、若手だとやはり発言しづらく感じることもありましたが、先輩に「大丈夫」と声をかけていただき、とりあえず「最初に発言する」のを意識してみました。すると、思ったより話を聞いてもらえたり、「実はこうなんだよ」とアドバイスをいただけたりして、おかげで2年目以降はより会議のムードなども理解しながら進められるようになったかなと思います。
最初の頃は、正解というか「先輩はきっとこうしてほしいだろう」とか「ブランドとしてこういう意見を持つべきだろう」みたいなことを意識しがちでした。ですが1年目のあるとき、先輩から「今井さんはどうしたいの?」と聞かれたことがあって。新人であってもマーケターとして、生活者の皆さまに自分の商材をどう受け入れてほしいのか、どう見てもらいたいのか、という意見を強く持っていかなければいけないと感じました。それ以降は、常に自分の意見を持って議論するように心がけています。