TOP PLAYER INTERVIEW #70

宇多田ヒカル 宣伝プロデュースを手掛ける梶望氏が明かす、デビュー25周年ベストアルバム『SCIENCE FICTION』のマーケティング戦略

 

タイアップに不可欠なのは「お互いのリスペクト」


―― 『SCIENCE FICTION』において、さまざまなタイアップが話題となりました。宇多田ヒカルさんの楽曲が映像コンテンツやメディア、広告と結びつくことで、どのような相乗効果を期待しましたか。

 宇多田ヒカルの場合は、オファーをいただいてタイアップが決まることが多いです。オファーしていただけるということは、宇多田ヒカルの作品へのリスペクトがあるということでもあるので、非常にありがたいと思っています。チームとしては「宇多田ヒカルのリアルやこれから作ろうとしている作品の世界感に近いものか」を、タイアップを引き受ける判断基準のひとつにしています。本人のリアリティにそぐわないオファーは基本的に引き受けません。
 
【綾鷹】 『綾鷹 meets 宇多田ヒカル‘traveling’』スペシャルムービー AYATAKA

 たとえば、宇多田ヒカルがデビューしたてのころはまだ15歳で、当時化粧品へのリアリティーがなかったためタイアップは断っていましたが、大人になった最近では資生堂さんともタイアップしました。今回の伊藤忠商事さんのテレビCMも、そのコンセプトやメッセージに対し、お互い共通項を見出せたから決まったわけです。タイアップ先とアーティスト側が互いにリスペクトできる関係性をもっていれば、シナジーを生み出しやすくなります。「愛」が込もったプロモーションは、人の心に響くと考えています。
 
新CM「おかげさまで、幸せです」篇 30秒ver(伊藤忠商事)

 タイアップはオファーをいただき、これから自分が制作しようとしている曲のアイデア・イメージと共通項があれば受け入れるスタイルです。100%書き下ろしたのは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の主題歌「Beautiful World」が初めてではないでしょうか。これは宇多田ヒカル自身がずっとエヴァンゲリオンのファンだったからです。

 基本、ドラマやテレビCMタイアップでは、お互いの最大公約数となる部分はある程度意識した上で、オリジナリティ溢れる作品をつくります。それもあってタイアップ先とかけ離れた作品にはなりません。プロデューサーの三宅さんが間に入ってその塩梅をうまくコントロールしてくれています。

※後編 宇多田ヒカルの“血”の通ったプロモーション戦略の真髄とは?「作品ファースト」で世界に挑む【ソニー・ミュージックレーベルズ梶望氏】 へ続く
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