CATCH THE RISING STAR #10

家事代行 ベアーズの若きCRMマネジャー 兼 楽団長のデュアルキャリア「自分らしく生きる」を体現する【上野拓人氏】

 

音大卒のフルーティスト


――家事代行の事業やマーケティングには、入社前から興味を持っていたのですか。

 実は、学生時代は音大でフルートを専攻していました。卒業を前に就職するかフリーランスで活動するか迷っていた時、ベアーズの吹奏楽実業団であるBears Wind Orchestra(ベアーズウインドオーケストラ、BWO)を知り、働きながら音楽活動を続けるという選択肢にすごく興味を持ちました。BWOは今年で創設6年目の新しい吹奏楽団で、認知は十分にされていません。一方で家事代行サービスも、まだまだ世の中に浸透していませんが、需要が高まっていくと確信しました。仕事も音楽活動も、これから開拓していく面白さや魅力があるのではと感じ、入社を決めました。

 ただ、全く葛藤がなかったわけではありません。多様な選択肢が広がってきたとはいえ、音大生の間では、卒業後に一般企業に就職することをネガティブに捉える風潮がまだ根強かったですし、音楽一本の道に進まないことへの後ろめたさ、音大まで行かせてくれた親への申し訳なさも正直ありました。ですが今は、仕事にも音楽活動にも誇りを持って取り組めています。

 また、マーケティングについては、大学受験の際に音楽か経済系の大学かで迷ったほど、興味がありました。もともと、音楽が人を動かす力って何だろう、という関心から、人々の感情や行動を突き動かすものを突き詰める、行動経済学やマーケティングに興味が湧いたのだと思います。人の感情は目に見えないですが、それを何とか可視化して分析して、実際に人を動かそうとするマーケティングの仕事に、面白みや魅力を感じています。

―― そういう背景があって、「兼任チャレンジ」としてマーケティング課に手を挙げたのですね。しかし、仕事と楽団の両立は大変そうです。どのように実現しているのですか。

 私の場合、平日はフルタイムで勤務して、週3日は業務終了後から3時間ほど、本社支部で練習しています。吹奏楽なので音も出ますが、幸いなことに近隣の皆様からご理解をいただけていて、時には依頼を受けて公演することもあります。

ベアーズ本社支部で練習する上野氏(左)

 ベアーズにはBWOの他、チアダンス部と女子陸上競技部があり、実は3割近くの社員が実業団員です。私と同じように、日中は通常業務をこなしながら、勤務後や休日に活動する「デュアルキャリア」を追求しています。そういった働き方や生き方を企業としても、社内の制度としてもサポートしていくという姿勢です。

 BWOでは楽団長を務めています。楽団の活動を続けていて、ある時「このままだとダメだ」と思った瞬間があり、自分の意見を出したところ、「上野君が引っ張っていってくれたら」と団員の皆さんに推していただき、楽団長に就任することになりました。

BWOは学校などでのコンサートのほか、SNSでのライブ配信も行う(上野氏は前列右から5人目)

 メインの業務であるCRMの方も、2度の試験を受けてマネジャーに昇格しました。年齢も背景も異なる8人のチームを束ねており、たとえば「何曜日に仕事量が増える傾向がある」といったことを分析して、人員を増やしたりベテランを配置したりといったシフト管理などもしています。

―― 楽団でも業務でも若くしてリーダーを務めているのですね。プレッシャーや課題を感じることはありますか?

 社会人になってたまたまリーダー的な役割を担う機会が増えましたが、もともとはサポート役タイプで、みんなを引っ張るのがそれほど得意なわけではありません。ただ個人的には、チームは人同士のつながりである、ということを心がけています。仮に不適切な振る舞いを部下がしたとしても、どういう理由で何があったのか話し合った上で、必要があれば指導することを意識しています。

 もちろん、楽団長もマネジャーも、ある程度のプレッシャーを感じながら日々を過ごしています。しかし、やはり音楽が好きというのが支えになっていると同時に、仕事を通してお客さまに喜んでいただきたいという仕事観があり、音楽活動も家事代行というサービスも、その点では共通していて、どちらもやりがいがあります。

 両立は容易ではありませんが、たとえば業務でちょっと上手くいかないことがあっても、好きな音楽に触れると癒しになったり、逆にフルートの練習が上手くいかない時でも、業務でお客さまから満足の声をいただけて励みになったりということがあります。また、時間的な制約を課題に感じることもありますが、制約があるからこそ、業務においても音楽活動においても課題がクリアになり、いかに効率的に結果を出していくかを考えます。これらは自分の成長にもつながっていて、大変さもポジティブに捉えることができています。

―― デュアルキャリアであることは相互に良い影響を及ぼし合っているのですね。今後の目標を教えてください。

 ベアーズの事業は、自分らしい生き方や働き方をサポートするサービスです。仕事を通して、それを希望する方々の助けになりたいと思いますし、自分もそうでありたいと思います。

 具体的な目標としては、BWOや家事代行サービス、そしてデュアルキャリアという選択肢をもっと多くの方に知っていただき、浸透させたいです。そしてそのためには、やはりマーケティングの知識や経験が必要だと思うので、もともと関心が高かったマーケティング業務に、将来的にはもっと本腰を入れたいと考えています。

―― 本日はありがとうございました。


 

【上司の視点】マーケティングとCRMのデュアルで「感動度120%」実現を

 
伊藤 圭 氏
セールス&プロモーション事業部 マーケティング課 課長 

 上野さんは非常に優秀な人材です。
 仕事と演奏のデュアルキャリアだけでなく、仕事においてもCRMとマーケティングのデュアルを実現しています。

 CRMはお客さまと直接やり取りし、お客さまの温度感を直に知ることができる。
 一方でマーケティングは、データからお客様を知ることができる。

 接しているからこそ見える部分、データだからこそ見える部分、片方だけでは欠けてしまう視点が確実にあると思っています。
 
 データと対面によってお客さまの状態・インサイトを深く理解することで、
「お客様感動度120%」の実現に向けて社内を導いてくれることを期待しています。
 できれば将来的には、マーケティング課へ異動してくれることを希望しますね(笑)
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