TとVがひとつになって~消費者とマーケティングの視点~ #01

新Vポイント誕生、CCCが歴史あるTポイントの名前を捨ててまで追求したものとは 【撫養宏紀取締役インタビュー】

 

CCC流「ポイントの使い方」


―― モバイルへの切り替え推奨の背景にも「楽しんでほしい」という思いがあるのですね。

 その通りです。ただ、新しいことが始まった時に行動を起こすのは一般に、関心の高いお客さまが中心です。Tカードは元々の会員数が7000万人いて、2022年度時点でモバイルTカード登録者は35%程度にとどまっていました。今後もすべての会員様に継続的にプロモーションしていき、モバイル体験の良さを享受していただきたいです。

 スマホの保有率は日本では9割を超えていますが、ユーザーによっては登録のハードルが高いケースもあります。個人的な話になりますが、私の高齢の父も、弁当屋で「モバイル登録をしてください」と言われて、登録方法が難しく断念していました。しかし、一回登録してあげると嬉しそうに毎回、その弁当屋に出かけていきます。つまり、モバイルを使いたくないわけではなく、最初のハードルを低くすることが大事です。UI(ユーザーインターフェース)を分かりやすくしたり、サポートしたりする仕組みを検討する必要があるかもしれません。

―― 日本は「ポイント大国」と呼ばれるほどポイントサービスが乱立し、主に携帯電話と紐づいた「ポイント経済圏」がしのぎを削っています。元祖であるTポイントは消費者に浸透した名前を捨ててまでVポイントと統合しました。新生Vポイントの優位性は改めて、何なのでしょうか。

 特徴はやはり、Visa決済に紐づいていることです。たとえVポイント以外のポイントを利用しても、Vポイントと紐づいた三井住友カードを利用することでVポイントを貯めることができます。大切なのは、お客さまに多様な選択肢を持ってもらうことです。

 何かのついでにTポイントを貯める、タッチ決済を使うことでさらに貯まるなど、選択肢が増えたことで、私たちが目指す「お客さまを囲い込むのではなく、ポイントをもっと楽しんでもらう」に近づきます。提携店はTポイント時代の国内15万店舗に、統合時に提携したお店を含めて15万5千店舗に上りますが、「VポイントPayアプリ」にチャージすれば、国内750万店舗、世界200カ国1億店舗のVisa加盟店でも使うことができます。海外で「Vポイントで支払います」と言ってもまだ通用しませんが、実質的にポイントを使えます。これまでTポイントの世界でしか楽しめなかったものが、すごく世界が広がったと感じています。

 私たちが最も重視するのは、貯めるだけでなく使うことです。その意味で「どこでも使える」は非常にお客さまにとって有益ですし、私たちとしては「ポイントの使い方」も重要だと考えています。

―― 「使い方が重要」とは、どういうことですか。

 もちろん、ポイントの使い方は個人の自由であることが大前提です。ただ、たとえば生活必需品を買って得たポイントを何に使おうかと考えた時に、寄付やギフト、あるいは好きなキャラクターやスポーツチームの推し活といった趣味に回せれば、素敵ではないでしょうか。

 そんな風に使っていただけることは、「ヒトと世の中をより楽しく幸せにする環境=カルチュア・インフラをつくる」というCCCのミッションにも通じます。ポイントを簡単に貯めて、使い道に多様な選択肢があるということが、ディスカウントが主流の欧米とは異なる日本のポイント市場の一番の良さであり、最初に申し上げた「成熟」だと思うのです。そのポイント文化の醸成にTポイントが貢献できたなら嬉しいですし、Vポイントになってますます進化させていきたいと思います。

―― 消費者にとって「どこでも使える」ことで、ポイントを楽しむこと、ひいては心を豊かにする投資につなげたいという考えなのですね。次回はマーケティング領域への影響をお伺いします。



 CCCがリニューアルオープンした東京・渋谷のランドマーク「SHIBUYA TSUTAYA」。さまざまなIP(知的財産)の世界観を体感できる「推し活エリア」もある。

〈第2回に続く〉
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