テレビCM新時代 #01Sponsored

CM効果は「指名検索」が最重要指標、ノバセル田部正樹氏に聞く「純粋想起」されるブランドのつくり方【新連載】

 

サービスにマーケティング予算を振り分ける


―― ロイヤル顧客を深く理解することで、行き詰まる前に打開できるプロセスを確立したのですね。「24時間受付」を打ち出し、新規顧客を獲得した結果、その後も順調に成長されたのでしょうか。

 成長を続ける中で、リピート率の低下という新たな壁にぶち当たりました。先ほど紹介したようなプロモーション活動を熱心に行なった結果、新規顧客獲得がうまく行きすぎて、リピートしてくれないユーザーまで獲得していたのです。逆に、既存顧客向けの施策はおろそかになってしまい、そのためにリピート率の低下を招いてしまっていました。

 そこで新規獲得よりも、既存顧客へのサービス向上を優先する方向に振り切りました。具体的には短い納期で納品できる商品を増やし、原価を改善し価格訴求力を上げ、既存客にも斬新に感じてもらえるような商品開発、そしてWebサイト内の検索機能を高度化するといった、顧客満足度の向上施策です。これらにマーケティング予算を割り振るようにしたのです。

―― 既存サービスの改善にマーケティング予算を振り分けたのですか。

 本来はマーケティングとサービス改善とは予算を分けるべきかもしれません。プロモーションに資金を注ぎ込んで、ロイヤル顧客になり得る人や顧客を大勢集めれば、それはプロモーションにおいては「成功」でしょう。しかし、本筋であるサービスが期待外れであれば、リピート率が下がり、マーケティングやビジネス全体では「成功」と言えなくなります。サービスが良ければ、ロイヤル顧客になってくれる可能性は高まりますよね。ロイヤル顧客の獲得にはサービス力とプロモーション力を両輪で改善し続けることが重要です。

 そして、指名検索を広告の効果測定における最重要指標として、それまでブラックボックスだったテレビCMの投資対効果を測定できるツールを開発し、インターネット広告と同じように高速PDCAを回すことで、ラクスルの指名検索数と売上を、いずれも数年で数十倍に押し上げました。その成功ノウハウを事業化したのが、日本初の運用型テレビCMサービスを展開する「ノバセル」です。
  
出典:ノバセル公式サイト

―― ノバセルではテレビCMに対して、どのようなアプローチをされたのでしょうか。

 ラクスルの経験を詰め込んだノバセルでは、当初から「初めてのテレビCMならノバセル」というメッセージを打ち出しました。初めてテレビCMを打つ会社にはおそらく潤沢な予算はなく、そうなると大手の広告会社はあまり熱心に対応しないかもしれません。そこに「初めてのCMなら」と、純粋想起を勝ち取りに行ったわけです。広告もまずはタクシー広告を中心に打ちました。大手競合の寡占状態に思えるテレビCM市場であっても、探せば勝てるフィールドが眠っているものです。先ほどお話ししたワンコイン名刺もその例です。

 ラクスルでは「チラシ検索」「ワンコイン名刺」「ネット印刷ならラクスル」というように、一つのカテゴリで純粋想起を獲得するたびに次のカテゴリに打って出て、現在はネット印刷業界でトップクラスの純粋想起を勝ち得ています。先行するビジネスには必ず似たようなサービスが追随してくるものなので、同じ市場にばかり留まらないのも、成長し続けるために大切な視点です。

 テレビCMの効果は一般に、既にブランド力の強い企業やサービスほど高くなる傾向がありますが、ラクスルは認知度ゼロから実績を積み、認知率60%まで成長しました。大企業に比べるとわずかな投資であっても、アイデアがあれば勝てるフィールドや「無い市場」の創出、そして純粋想起を勝ち取ることができます。成長したラクスルでは最終的にテレビCMに多額の投資をしましたが、指名検索される状態であれば、CPAを半分に抑えることも可能になります。指名検索の威力はそれほどまでに大きいものです。
  
出典:123RF

 企業全体の99%を占める中小企業は、大企業のような大きな広告予算をなかなか投じることはできませんが、きちんとしたマーケティングで効果的なテレビCMを運用することができれば、Web広告では実現できないような集客や売上を実現することができます。私がノバセルで目指す「マーケティングの民主化」とは、そのように、誰もが適切なマーケティングを使いこなし、ビジネスを健全にグロースさせられる世界です。そこでは「指名検索数」がキーワードになって、CMに限らずさまざまな施策や事業を成長につなげていくと信じています。

―― 本日はありがとうございました。
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