TOP PLAYER INTERVIEW #72

岩井琢磨氏、奥谷孝司氏らの顧客時間がMBOで独立 「ネットワーク組織によるCX デザイン」で目指す進化とは

 

共創とスピード


―― いわゆるコンサルティング会社との違い、ネットワーク組織ならではの特徴について詳しく教えてください。

岩井 我々は業態としてはコンサルティング提供になりますが、あくまで「CXデザイン企業」であると捉えています。コンサルティング会社に相談する以前に、自分たちがどのような顧客体験を描きたいのか、そのためにどのような事業システムを構築したいのか、そのための課題は何なのか。そこから可視化していくステージに、個々のソリューションではなく事業システム全体のデザインというアプローチで伴走しています。

そのため特徴のひとつは「共創」スタイルであることです。事業会社からの意図や仮説を、顧客時間が構造化して戻す。その相互のやりとりをプロジェクトとして設計し、マネジメントしていきます。つまり関与する「ステージ」も「アプローチ」も、いわゆるコンサルティング会社とは違うものではないかと思います。

奥谷 「ステージ」におけるアウトプットとしては、「このような顧客体験をつくりましょう」という一方的な提示をすることはなく、事業主ともひとつのチームになってデザインしていきます。その時に戦略・クリエイティブ・テクノロジーの各専門性を持つメンバーが参画し、単なる妄想ではなく事業と顧客の双方にとって価値のある「血の通ったもの」にしていきます。

「アプローチ」における特徴で言えば、顧客体験の構想・設計・開発・運用という各フェーズで、顧客時間のネットワークから参画するメンバーが入れ替わっていきます。日本企業でDXや新規事業開発のプロジェクトがうまく進まない理由のひとつは、結局のところ、「経営意図」や「目指す顧客体験」の曖昧さにあります。いくらデジタルを導入したからといって、それだけで顧客体験が良くなり、事業成果に繋がることなど起こりません。そのため顧客時間のプロジェクトでは、デジタル以前に、まず戦略と価値の両面から体験を描き出せるメンバーが参画するという可変的な体制を取っています。
 
顧客時間 取締役 / Chief Producer
風間 公太 氏

音楽学校や劇団四季での広報・マーケティング担当を経て、2007年良品計画入社。コミュニケーション担当として、日本での企業ソーシャルメディア黎明期から無印良品 公式Twitter、Facebook、Instagramアカウントを開設し、500万人を超えるフォロワー/ファンの窓口を一手に担う。また、CRMアプリ「MUJI passport」や睡眠アプリ「MUJI to Relax」、グローバルブランディングなど、無印良品のOMO/DX推進に携わる。2019年に顧客時間参画。マーケティングプランナーとしてもスタートアップやローカル企業などの支援を行なっている。

風間 顧客時間のプロジェクトの特徴としては、進行するスピードがとにかく速いことですね。我々のメンバーには海外在住者もおり、拠点も時間帯もバラバラです。そもそもオフィスを持っておらず、チームコミュニケーションはすべてオンライン化されています。しかし「オンライン」であることは本質的な意味はなく、重視しているのは「オンタイム」で物事を進める体制です。多様性あるメンバーが同時にひとつの課題や情報にアクセスし、並行していろいろなことをオンタイムで進めていくので、ものすごいスピードでプロジェクトが進むのです。

たとえば「CXの改革をしたい」という課題があるとすると、戦略を描いて、それを実行できる体系を描き、デジタル接点を考え、データのシステムの改変ポイントを考えるといったタスクが生まれますよね。顧客時間では、それらがある程度並行して動いていくので、普通であれば半年かかるところを、2カ月で完遂できたりするんです。

奥谷 イメージで言えば、ひとつの建物の設計図を描くときに、全体を俯瞰しながら異なるメンバーが4箇所から同時に描いていくような感じです。誰もが全体を見ながら仕事をしているので、バッティングすることもなくあっという間に設計図が描き上げられてしまうということですね。

岩井 ネットワーク組織は、良い意味で超属人的な組織であり、個々がプロフェッショナルであることが大前提です。お互いの能力を信頼しており、誰がどのようなアウトプットを出してもらえるかということが互いにわかっているからこそ、高いレベルでの並行が可能になります。また同時に私たちは全員対等な関係であり、上下関係がないことも重要です。

このようなメンバーが自律的・主体的に動きやすい環境や関係性を創っていくことが、経営陣である私たちの仕事と言えます。

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