顧客満足を探究する~データと戦略の森から~ #02

「1位宝塚、2位ヨドバシ」顧客満足を高める鍵はバラツキ抑制、トラップにもご用心 【青山学院大学 小野譲司】

 

なぜバラツキが生じるか?


 同じ製品・サービスを利用している顧客の満足度にバラツキが生じるのは珍しいことではないが、なぜ満足度にはバラツキが生まれるのだろうか。主な原因として、顧客の個人差、商品差、地域差、店舗・チャネルのオペレーションが考えられる。

 顧客の個人差とは、ニーズが異なる顧客ないし顧客セグメントが顧客基盤を構成することにより、満足度のバラツキが生じることである。性別、年代、所得、教育水準といったデモグラフィック特性と過去の購買履歴は、当該ブランドに対する顧客のニーズや期待の違いを反映する。

 企業が市場拡大を狙って多様な顧客セグメントをターゲットにするケースと、意図せずに想定外の顧客セグメントが流入してくるケースがある。たとえば、男性の出張客が主要客層であったビジネスホテルに、女性の観光客が利用するようになると、ホテルに求めるニーズの違いによって満足度が相対的に低下する、というものである。これは、顧客ターゲットを広げるために製品・サービスの品揃えを追加・拡充すると、顧客のタッチポイントや経験するサービスに違いが出やすいからである。

 企業が地理的に市場拡大を図る場合、地域ごとの顧客ニーズの違いとともに、ローカル市場での競合相手や競争ルールの違いによってバラツキが生まれる可能性がある。また、多様な顧客セグメントを獲得するために、多店舗展開を図る、もしくはオンラインやモバイルといったマルチチャネルを展開するケースも少なくない。サービスレベルの統一や、オンラインとオフラインでシームレスな対応ができるかどうかといった問題によって、品質のバラツキが生じる可能性がある。

 図中の左上の領域にプロットされた高CSIのブランドは、娯楽や旅行といった快楽的な消費を伴うだけでなく、差別化されたコンセプトでユニークなサービスや体験を提供するブランド、機能的に特化した専門業態が多い。

 それに対して、右下の領域にプロットされる低CSIのブランドは、通信、鉄道、エネルギーといったインフラサービスに象徴されるように、顧客基盤の裾野が広く、老若男女、あるいは高所得から低所得まで対象にしている。バラツキを生じさせる特性が多い業種ないしブランドである。たとえば、衣料品や化粧品を扱う通販サイトを利用する顧客は、そこで売られている商品を気に入らなければ購入することはない。それに対して、近所にあるドラッグストアやスーパーで買い物をする人は、家から近い場所であれば多少、好みに合わなくても商品を購入することがある。比較的広い品揃えの小売店は、多様な顧客のニーズに応えている反面、それぞれの多様なニーズを満たしきれず、ほどほどの満足を提供しているとも考えられる。
123RF

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