NEW CEO INTERVIEW #01
dentsu Japan 新CEOの佐野傑氏が語る、広告コミュニケーションの拡張
広告以外にも領域を広げている狙いとは
―― AXの領域が回復してきた理由は何でしょうか。
私たちの強みは、テレビやデジタル、クリエイティブ、メディア、データなどのアセットを統合して提供し、クライアントのマーケティングROI(投資収益率)の向上を実現できることです。クライアントのニーズが多様化する中、マーケティング領域全体に関わる仕事が増え、結果としてAX事業が回復してきました。
BX、CX、DX領域も拡大しています。飛躍的な成長のため、トランスフォーメーション(変革)の実現に多くの企業が取り組んでいます。私たちは広い領域からクライアントの成長をサポートし社会全体の成長に貢献していくことを使命としており、実現できると信じています。私たちが実現しようとしている「事業の変革と成長モデル」では、4つの領域の専門性を基盤に、領域横断の連携によって事業に変革と成長のサイクルをもたらすことを目指しています。この好循環が、AXを含む各領域の成長に寄与し始めています。
―― BXとDX領域で、佐野さんのどのような経験を生かしているのでしょうか。
長年のビジネスプロデューサーとしての経験の中で、クライアントの変化を常に意識してきました。その中で培ってきた「視座」が事業変革を推進する上で役立っています。
最近は企業の課題が複雑化していると実感しています。たとえば、人間の身体で腰に痛みがあったとしても、その原因は必ずしも腰の筋肉によるとは限らず、内臓や骨も原因となっていることがあります。それと同じように企業の課題もひとつではなく、複合的に絡んでいます。何が原因でどんな解決策が適切か、常に深堀して考え続ける必要があります。
広告を手掛けていれば、「この商品パッケージの改善案は」「この商品コンセプトは最適か」「売り出すベストなタイミングか」といった問いや課題に直面します。そのうちに「この事業のそもそもの意義は」「クライアントや社会は何を期待しているのか」というように、広告から事業全体、社会全体にまで思考が拡張していきます。こういった思考のプロセスの中で、真にクライアントや社会が求める変革の姿が見えてくるのだと思います。