「迷ったら、削る」グローバル戦略の描き方 #03

海外展開する商品パッケージに日本語を使う意図とは?現地の顧客を理解する“匙加減”の大切さ

 

進出先の顧客と自分たちを繋ぐ「匙加減」の大切さ


 ここで言うチューニングとは、グローバルで勝負できそうな商品やサービスがある程度できたあとに、進出したいエリアに合わせていく仕上げのようなイメージです。これがうまくいくと、自分たちの商品やサービスが現地の顧客とピタッとハマってくれ、うまく自走してくれます。

 海外向けの商品パッケージをデザインするとき、良かれと思ってすべて英語にしてしまうことがよくありますが、本当にその判断は正しいでしょうか。実際にシンガポールに進出している某グローバルファストフードチェーンでは、新商品の名称や広告、看板に日本語(漢字やひらがな)を使っています。これは現地の日本人に向けたものではなく、シンガポールに住む人に「日本に関係する商品だ」と一目で認識してもらうためです。そのことで、商品のクオリティの高さを訴求しています。パッケージに日本語を書くことで、日本のものだから安心だよね、というメッセージが含まれているわけです。



 海外ブランドが日本に進出するケースを考えてみても、韓国コスメのパッケージにはハングル文字が書いてあるから良いわけです。日本向けだからといってすべて日本語に直していたら今の時代は売れないというのも、肌感覚として理解できるのではないでしょうか。こういった“匙加減”は現地の実情を知らないと、なかなか掴みづらいのです。

 I&COでもヘルスケアツーリズムを手がけるマレーシア発の企業「Trambellir」社と提携し、UXの面からサービス改善を支援しています。その仕事を通じても、海外の人から見た日本へのイメージは、我々が持っているものと異なっていることがわかります。漫画やアニメの影響からサイバーパンクっぽいものだったり、TokyoやKyotoのイメージがより強調されていたりするのです。それらを理解した上で、どういったコンテンツを発信すると受け入れてもらいやすいのか、まさにテストを繰り返しているところです。
 

日本進出したい海外企業の受け皿はまだまだ足りていない


 最後に、アジアから日本市場への進出についてもお伝えします。日本は他国から見た時に言語ハードルが高く、独自のコンテキストがある市場です。そのせいで日本市場への進出をためらう、または検討したけれど諦めたといった企業も多いと聞きます。

 シンガポール進出にあたって面談した現地のスタートアップから、逆に日本進出に向けた相談を受けることもありました。彼らにとって日本への道先案内人というニーズは思った以上にありそうだというのが実感です。我々も、いきなり日本でサービスを展開する前に、まずは日本企業との協業や、日本の投資家からの支援を受けることも選択肢では?と伝えています。

 アジア全体として日本市場を理解している相談相手の必要性は今後も高まっていくと考えています。I&COとしてもアジア発のスタートアップが日本市場に進出する架け橋になりたいです。

 今回、「『迷ったら、削る』グローバル戦略の描き方」という連載の中で、「ノンバーバル、ワンメッセージ」、「グローバルに届くコンテキスト」、「顧客を理解する」の重要性をお伝えしました。グローバル戦略を考える視点として、ぜひ自社やクライアント企業の海外進出のヒントにしてみていただければ幸いです。

 次回以降は、国内外のグローバルで評価を得たプロジェクトやブランド展開などを、I&COが携わった実例も交えながら紹介していきます。
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