パナソニック コネクトから学ぶ「B2Bマーケティングの本質と成果を上げるための実践」 #01

「顧客・社会と共に、継続的に価値を創り、伝え、見届ける」B2Bマーケティングの本質【パナソニック コネクト 関口昭如氏】

 B2Bマーケティングの重要性は急速に拡大しており、現代のマーケターにおいても注目の的だ。特に、長らくマーケティングが不在で、営業への引き合いに依存していた日本企業にとって、B2Bマーケティングによる企業変革は喫緊の課題ともいえる。しかし、B2Bならではの効果的な方法論はB2Cに比べると確立されておらず、さらにデジタル、グローバル化など環境の変化もあり、最適なマーケティングプロセスを構築するのは各社とも至難の業である。また、B2B企業にてマーケティング組織やプロセスをつくったものの、期待値にあった成果を出せずに、その存在意義を明示できずに苦しんでいる企業も少なくない。

 今回、多種多様なB2Bソリューションのビジネスを行っているパナソニックコネクトにおいて、デジタルカスタマーエクスペリエンスやマーケティングなどを総括している関口昭如氏がB2Bマーケティングの本質的な考え方や成功ポイントを解説する新連載「B2Bマーケティングの本質と成果を上げるための実践」をスタートする。第1回では、基本的なマーケティング思考とB2Bならではの留意点について詳しく解説する。
 

B2Bにおいても変わらない、マーケティングの「顧客/社会」起点と「価値」起点


 はじまして、パナソニック コネクトにて、デジタルカスタマーエクスペリエンス、事業部マーケティング、IT基盤のCX統括など、3つの兼務によりマーケティングを中心とした事業変革に取り組んでいる関口です。今回からスタートする連載を私自身も楽しみにしています。

 第1回は、B2Bマーケティングにおいて、正しくマーケティングの基本思想を理解し、自分のものにしておく重要性をお伝えしたいと思います。皆さんもあると思いますが、多くの「〇〇マーケティング」という言葉や新しい概念をよく見聞きします。それらに名前をつけることを否定はしませんが、そのやり方だけを盲目的に信じてしまう、それだけがすべてと考えることで、本質的なことから外れていってしまうことがあります。

 また、昔からマーケティングは「売る/売れる仕組みをつくること」と言われることも多いですが、ここには誤解が潜んでいます。「売る」「売れる」ということはもちろん重要ですが、マーケティングはセールスとは立場が異なります。「売れる」に注力しすぎて顧客不在のセールスプロモーションをしてしまうことがあります。誤解がないように言いますがセールスとの連携はとても大事で、我々もその連携をとても重要視にしています。

 ただし、マーケティングの基本スタンスとして、譲れないポイントは「顧客志向」や「価値志向」です。ちなみに2024年1月25日、国内においても34年ぶりにマーケティングの定義がアップデートされたことをご存じでしょうか(日本マーケティング協会による定義)。
 

(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。
注 1)主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
注 2)関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
注 3) 構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。

日本マーケティング協会による「マーケティングの定義」(2024年版)
 

 このアップデートされた定義のなかには、脈々と引き継がれている「顧客志向」や「価値志向」、「プロセス化」が基本的な思考として根付いています。一方で、「持続可能」そして「顧客・社会との共創である」という新たな視点のアップデートも加わっています。

 私の言葉に置き換えてしまって恐縮ですが、「本当に商材やソリューションを必要としている顧客・社会に(あるいは、その顧客・社会と共に)、継続的に価値を創り出し続けること」がB2Bマーケティングでも本質だと考えています。

 ここであえて自分で追加している点で重要だと思うところのひとつは「本当に必要な」という点です。「売れればいい」という考えとは、大きく異なります。近年B2Bマーケティングでは、セールスマーケティング(営業プロセスと連携した、あるいは営業プロセスの中でのマーケティング)を中心に語られることが増えています。セールスマーケティングもとても大事で、今後解説していきます。ただ、注意点として「本当に必要な顧客はどんな顧客なのか」「本当に価値が生まれているのか」「継続的に価値を維持できているか」などが抜けてしまうこともありがちなのです。

 また「継続的に価値を」というのも大切なキーワードです。契約した瞬間に価値が生まれることはほとんどありません。利用されたり、使い始めたりされたときのほうが多いと思います。まずは、マーケティングを全体で包括的に視野を広げて考えてみることをオススメします。セールスマーケティングのほかにも、プロダクトマーケティング、リレーションシップマーケティング、B2Bブランディングなど、みなさんの活動はこれらが連携しているでしょうか。考えてみる要素は、多くあると思います。

 パナソニック コネクトでは、あえてそれらの幹になる考えとして「顧客価値起点のマーケティング」として推進しています。自分こそ名前を付けているではないかと言われそうですが、本来「顧客視点」「価値視点」はマーケティングの本質でそれらの形容詞は不要で、特記すべき言葉ではありません。ただし、短期視点で、かつHow先行の本質を見失ったマーケティングがB2Bにおいても散見されます。「顧客価値起点」という本質を見失わないマーケティングのために、あえて付加して呼んでいるのです。

 長らく、特に多くの国内B2B企業では、マーケティングという機能が「経営ごと」と解釈されず、どちらかというと引き合い依存で技術ベースでのプロダクトアウト視点でのビジネスをしてきたことは周知の事実です。今回の連載では、B2Bマーケティングとその成功のための気づきを知っていただくために、事例も踏まえて語っていきます。

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