CATCH THE RISING STAR #16

ミツカンの「健康オタク」若手マーケターが目指す「押し付けない」健康社会【後藤友政氏】

 

納豆のイノベーションを目指す


―― マーケティングを通してやりがいを感じることや、目指すことを教えてください。

 時代と共に変わりゆく生活者のことを知り、インタビューをしたり定量データを見たりして「もしかしたらこういう課題があるんじゃないか」とピーンと来た時は、すごくうれしいです。この「ピーンと来た」を商品に反映できたら、よりやりがいを感じるだろうとも思います。

 納豆は古くから日本人に馴染み深い食べ物ですが、どれだけの国民がどれほど食べているかというと、週に1回以上食べているという方の割合は約6割。裏を返せばまだ4割の人は週に1回も食べていないわけです。調理しなくてもすぐ食べられて健康に良く、なおかつ価格も求めやすい。納豆にはそんな素晴らしい価値があるのに、なぜ4割の人はそれほど頻繁に食べていないのか。背景には臭いなどネガティブなイメージもあるかもしれません。海外も含めて、これまで食べてこなかった方にまで食べていただくには、既存の納豆の改善だけでなく、イノベーションを起こすことも必要なのではと考えています。

 主力商品である「金のつぶ」シリーズも長年、革新に取り組み続けてきたブランドです。「パキッ!とたれ とろっ豆」は、それまで一般的だったフィルムやたれの袋を無くし、ねばつくフィルムをはがす手間を省き、ふたを二つ折りするだけでたれをかけることができるようにする容器の革新で、幅広い支持を得ました。とろっ豆における容器の革新は、納豆に対する比較的明確な不満の解決によるものでしたが、納豆にはまだ掘り起こせていない不満や課題、アプローチの切り口があるのではないかと感じています。

 ミツカンは生活者ファーストの考え方で、生活者のためになると開発担当者が根拠を持って提案できるのであれば、そのアイデアにリソースを割いて「やってみなよ」と背中を押してくれる社風があります。私も自分なりに生活者の、まだ見えていない課題を掘り起こして、商品の差別化やイノベーションにつなげていきたいです。

―― 後藤さんはご自身も健康に対する意識が高く、納豆事業にピッタリな人材とお見受けしますが、課題に感じることはありますか?

 私は毎日自炊をして、野菜や調味料にもこだわったり、弁当を毎日持参したりするなど、食に関しては「健康オタク」と呼べるかもしれません。

 だからこそ、私の友人にもいるような、自炊をあまりしなかったり、そこまで健康にこだわらず「食べたいものを食べる」というスタンスだったりする人の気持ちを、なかなか読み取れないという課題を感じています。消費者インタビューの結果などを見ていても、食事や健康に対する考え方は人それぞれに異なります。イノベーションを起こしたいなら、やはり自分の理想を押し付けるばかりでなく、異なる考え方についても理解し、共感していく必要があるなと思うようになりました。

 その意味では、納豆だけでなくさまざまな商品やサービスのマーケティングに携わり、色んな層にアプローチできるようにしていきたいと考えています。人それぞれに異なる価値観や考え方に合ったやり方で、それぞれの健康を実現してもらうのが一番だと思いますから。

 ちなみに、納豆はもともと好きで食べていましたが、納豆担当になってからはさまざまな商品を食べ比べしたり、納豆を使ったアレンジレシピを食べてみたりしています。意外な美味しさを出せる素材の組み合わせなども、マーケティングの参考にしたいですね。

―― 本日はありがとうございました。


 

上司の視点:オープンマインドと芯の強さで事業貢献

 
槇 亮次 氏
Mizkan Holdings執行役員 日本+アジア事業 マーケティング本部長

 後藤さんは、当社が新卒からマーケティング部署配属という新しい採用コースを始めた2期目の社員となります。

 学生時代のマーケティングの学びを生かしながら、常に消費者視点で考え行動することで、期待を上回る成果を上げてくれています。

 他部門を経験していないことを強みにオープンマインドで課題に取り組み、自身のこだわりも貫く芯の強さを持って、チルド事業に貢献してくれています。

 企業理念のひとつである「買う身になってまごころ込めてよい品を」に基づいた日々の考え方や行動は、周囲のメンバーに対しても、自分独自で考え方を深める重要性を気づかせてくれています。

 これからのマーケターとしての大きな成長と飛躍に期待しています。
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