テレビCM新時代 #02

「カンヌライオンズ=ビジネス評価せず」は誤解 アワードの意義と広がるクリエイティビティ【佐藤達郎】

 

広がるテレビCMの可能性


 電通が発表する「日本の広告費」でネット広告費がテレビ広告費を抜いたのは2019年。しかしそれは、テレビCMが時代遅れのコンテンツになったということではなく、目的や事業計画に合わせた統合型コミュニケーション、いわゆるトリプルメディアやPESO(Paid:広告、Earned:ニュースなど、Shared: SNSなど、Owned:自社媒体)の最適配分を求める時代になったということです。その中でテレビCMは、ターゲティングや予算など依然として課題をはらみつつも、改めて、莫大なリーチやブランド価値の向上、指名検索の獲得を期待できる手法として期待が高まっていると思います。

 BtoBのテレビCMが明らかに存在感を増しているのは、その証左と言えるかもしれません。従来、マスに訴えかけるテレビCMはBtoCが中心でしたが、BtoBがテレビCMをやる理由は大きく3つ考えられます。ひとつはリクルート。採用候補者やその親にとって、テレビCMをやっているということは企業への信頼を高めます。2つ目は従業員向け。「うちもテレビCMをやっているんだ」ということがモチベーション向上につながります。3つ目は新規のクライアント企業向けに、ドアオープナーの役割を果たすようです。

 かつて私が広告会社に勤めていた頃は、中途半端な予算しか出せないのであればテレビCMではなく屋外広告など他のメディアを検討した方が良い、とも言われていました。しかし現在は、それほど高額な予算ではないCMをわずか数回流すだけであっても、強いコンセプトや効果測定との連動、Webへの波及などを組み合わせれば、高い効果を生み出せる可能性も出てきました。

 これまで述べてきたように、クリエイティビティの領域やテレビCMが持つ可能性は、ますます広がってきています。長年の難題であった広告効果の測定と、それに基づく運用方法にも改善が見られるようになってきました。重要なのは、各企業がそれぞれの事業計画や目的に合わせて、最適な広告コミュニケーションや評価指標を選べるということだと思います。アワードはこれらに対する他企業の取り組みを知り、自社事業に生かせるヒントを探る場です。その意味で、カンヌライオンズ的な包括的な広告アワードだけでなく、ビジネス貢献にフォーカスしたアワードが日本にあってもいいかも知れません。
  
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