CATCH THE RISING STAR #17

花王の若きグローバルマーケターが追求する生理用品ロリエのアジア展開と現地コミュニケーション【瀧柳七海氏】

前回の記事:
ミツカンの「健康オタク」若手マーケターが目指す「押し付けない」健康社会【後藤友政氏】
 企業におけるマーケティングの重要性が増す一方、「マーケターの仕事は生成AIに奪われるのではないか」とも囁かれる昨今。そんな変革期に、マーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。

 Agenda noteでは「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。生まれた時からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。

 第17回は花王から入社5年目にして生理用品「ロリエ」のタイ・マレーシア展開を担当する瀧柳七海氏が登場。留学時代にデータ分析のスキルと「異なる考え方を受け止める」柔軟性を培い、文化の異なる異国でシェア拡大を目指す瀧柳氏の奮闘を聞いた。
 

「真面目」な社風が合っていた


―― 花王に入社された経緯を教えてください。

 高校卒業後、シアトルの短大とニューヨークの大学で計4年間、学びました。特にマーケティングをメインで勉強し、「データから顧客のインサイトをどのように見つけていくか」というテーマの講義を受けた時、デジタルとマーケティングの掛け合わせに面白さを感じたんです。

 学んだことを生かしつつ、将来どういう仕事をしていくかを考えた際、日常的に人々が使う消費財を扱う企業に魅力を感じました。赤ちゃんから高齢者まで、あらゆるライフステージにおいて自分の所属する企業の商品を使ってもらえるっていいなと。中でも花王は、アタックやロリエなど膨大なブランドを取り揃え、あらゆるライフステージの方々向けに展開しており、さまざまな経験ができる場だと感じました。
 
瀧柳 七海 氏
花王 ハイジーン&リビングケア事業部門 サニタリー事業部 ロリエ海外

 外資系の消費財メーカーなどの入社試験も受けました。どの企業もいい意味で野心的で、間違いなく成長できる環境だなと魅力的に感じましたが、花王を選んだ最大の理由は、自分の性格に合っていると感じたからです。

 社員の多くが「花王をひと言で言い表すなら?」と聞かれたら「真面目」と答えるでしょう(笑)。人を大事にする社風で、「正しいことをしていこう」という考えの人間が多く、選考の際もその雰囲気がすごく伝わってきました。生真面目な自分にはこの社風が合っているなと思い、入社を決めました。

―― 入社後の業務内容を教えてください。

 入社時にデータを活用したマーケティングに携わりたいと話したこともあり、デジタルマーケティング系の部署に配属され、データ分析を担当しました。SNSやECサイト、その他オンラインのさまざまなデータを用いて、お客さまのニーズやインサイトを分析して、各ブランドの活動につなげていく役割です。

 化粧品・洗剤・入浴剤など、さまざまなブランドを横断的に分析する仕事だったので、特定のカテゴリやブランドに縛られないからこその俯瞰的な気づきが得られました。入社2年目頃からは、徐々に自らデータを分析するだけでなく、データ分析の講師として、社内向けに研修する立場になっていきました。

―― 入社2年目で講師になられたのですか。

 コロナ禍の影響でデジタル化が急激に必要性を増す一方で、お客さまのインサイトも多様化し、読みづらくなっていました。各ブランドのマーケターも、ECやSNSなどオンラインの動きを把握するのはもちろんのこと、データ分析がある程度できるようになる必要がありました。

「こういう切り口でデータを見ると、こういうインサイトが見つかりやすい」といった、データ分析の手法や基本的な考え方を、社内向けの研修を企画し、教えました。

 もちろん、これまでに各ブランドマーケターがデータ分析をしていなかったわけではありません。ただ、大企業の宿命的な課題として、どうしても縦割りになってしまうところがあり、花王全体としてデータの蓄積と知見を底上げし、レベルアップするための講座でした。

 講師の中には私より年次の低い社員もいて、自分たちよりも年齢も役職もはるかに高い社員に対しても研修を行いました。そういうところに花王の社風が現れているとも思いますし、他の人に教えることで自分自身にも大きな学びが得られました。

 入社時からこのようなデータ分析や講師業務をしてきましたが、5年目になる今年、生理用ナプキンのロリエのタイとマレーシアのマーケティングを担当することになりました。これまでも海外のデータを見ることはありましたが、主に国内をブランド横断で見ていたので、ロリエという特定ブランドの、それも特定の国・地域のデータを見てみると、やはり大きなギャップを感じます。アジアは今、デジタルが急成長している市場です。これらのデータからどんなインサイトを見出して、これまで自分が培ってきたデータ分析と活用の手法を現地のマーケティングに生かしていくか、試行錯誤しているところです。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録