CATCH THE RISING STAR #18

大丸松坂屋3年目マーケターが百貨店を起点に目指すテクノロジー活用と街づくり【近藤慎一郎氏】

 

テクノロジーとビジネス両方が分かる人材に


―― 特にデジタル領域で活躍されている印象ですが、元々、専門性を持っていたのですか。

 得意分野ではありました。中学生のころ、当時はそのまま買うよりも自作したほうが安いという理由から、電気街でパーツを買って自分でパソコンを組み立てたりしました。矛盾するようですが、「テクノロジーの力で楽がしたい」という思いがあったので(笑)。高校の頃の陸上部では、スマートフォンでフォームを撮影してすぐ部内で共有し、翌日の練習から反映するといったことを仕組み化していました。

 実は大学時代は、先ほどお話しした当社が寄付講座をしていた大学から、情報系の通信制大学へ編入しました。コロナが広がり始めていた頃で、大学でリアルに授業が受けられないのであれば、この先の重要性が増しそうなテクノロジーとビジネスの両方が分かる人材になるための勉強がしたいと思ったのです。どこでどんな仕事をするとしても、テクノロジーと経営・マーケティングの知識があればポータブルスキルとして活用できると考えました。実際、ネットワークの仕組みから経営系、デジタルマーケティング系のことまでみっちり勉強できたのは、今の仕事に生きていると思います。

 また、完全にプライベートな活動ですが、ボランティアで「TEDxKyoto」というローカルスピーチイベントの運営に関わりました。そこでは自分とは違う業界や、さまざまな職種の人と交流し、刺激を受けています。私の根っこには「人が喜ぶ顔を見るのが好き」という思いがあり、それがテクノロジーの活用やイベント運営などにつながり、自分のスキルや経験として身に付いてきたのではないかと思います。

――課題に感じることや、将来取り組みたいことはありますか。

 インバウンド担当になってからは、訪日客の急増に伴って目の前の業務に追われがちで、自分で企画を立てるところまで満足にできていないのが、目下の課題です。

 また、J.フロント リテイリングが手掛ける街づくりに共感して入社したわけですが、百貨店の販促業務に携わって実感したのは、どんなに素晴らしいコンテンツがあっても、適切に発信しなければ、お客さまは店や街に来てくれないということです。

 大丸松坂屋は優秀な販売員さんがたくさんおり、店頭まで来ていただければ間違いなく価値を届けられる自信がありますが、デジタルでのタッチポイントにおいてはまだまだ開拓の余地があると思っています。百貨店の事業や、J.フロント リテイリングの不動産事業における街づくりにおいても、そのコンテンツを伝えるための最適なメディアを考えながら、戦略的に発信していくのが大切です。このようなメディア戦略にも関われたらと考えています。

 また、ずっと取り組みたいと思ってきた街の活性化に携わるために、不動産事業にもチャレンジしたいと考えています。これは自分の得意を生かして、オフラインではなく、オンラインで人を集めるような施策をやってみたいですね。メディア戦略を含め、全体のタッチポイントを設計するような立場で取り組みたいと考えています。

―― 本日はありがとうございました。
 
 

【上司の視点】データを「誰かにとって意味あるもの」に

 
木村 秋斗 氏
大丸松坂屋百貨店 本社 営業本部 営業企画部 インバウンド担当 部長

 近藤さんはデジタルデバイス活用、データ分析・加工のスキルが高く、社内で頼られる存在です。ですが、一番の理由は彼の人柄によるものだと思います。

 そして、インタビューの中でも本人が触れていた「人」への興味・関心をこれからも武器にし、さらに磨きをかけてもらいたいと考えています。

 なぜなら、ビジネスとして扱うデータには事実が淡々と綴られていると思います。それを血の通ったものにするために「人」の要素は不可欠であり、「誰かにとって意味のあるもの」に変換していくこともマーケターとしての役割です。

 ですので、まだまだ多くの人と出会い、将来のお客さまを想起する業務を通じて学び、一層深めてもらえたら嬉しいです。

 少し話は逸れますが、人は誰かとコミュニケーションをとる際に、無意識にマーケティング活動を行っていると思います。たとえば、「この人にはこんな伝え方をしたら喜ぶかな?」とか「日常の様子からこういうのが好きなのかな?」など。

 今後、今述べたような感覚でマーケティングが身近になるように働きかけていきたいと考えています。そこで、近藤さん(のような人材)が積極的に先導してくれることを期待しています!
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