TOP PLAYER INTERVIEW #74

31年ぶり「Jリーグカレー復刻」の企画者 竹渕祥平氏が明かす、話題化させるための思考法

 

「主観」と「客観」のバランス


―― 今回のプロモーション施策を企画する上で重視したポイントは何でしょうか。

 プロモーション活動に限らず、マーケティング全般で意識しているのが「主観」と「客観」のバランスです。その行き来がすごく重要なポイントだと思います。仮に主観だけで突っ走ってしまうと、いわゆる内輪ノリになってしまい、狙い通りの成果が得られません。

 企画者にとっては面白いことでも、それが押し付けになってしまいます。一方で、客観的な目線だけだといい意味で尖った要素がなく、誰にも刺さらない企画になってしまうことが多くなります。

 今まで私は女性向けの化粧品業界で長らくマーケティングをしていたので、強制的に客観性を持ってリサーチを重ねていました。顧客のインサイトに憑依するように取り組んでいたのです。

 ただ、今回の企画は、私が今年Jリーグに転職してから初めてメインで担当するものです。私自身もずっとJリーグのファン・サポーターの1人だったので、自分が感じる課題感や楽しさやサッカーへの愛といった主観を取り入れつつも、様々な価値観を持つファン・サポーターという客観的な目線をうまく行き来しながら、自分自身の中に2面性を持って企画しました。

 そうはいっても、アイデアそのものの「面白さ」の検証は取り組んでみないとわからないですし、もしかしたら盛大に滑る可能性もあります(笑)。そのため内輪ノリにならないように、外部のクリエイティブディレクターやPRのスペシャリストにもご協力いただき 検証を進めました。
  
2024年5月15日(水)2024明治安田J1リーグ第14節開催の全10スタジアムで1000個ずつ、合計1万個を配布された復刻版の「Jリーグカレー」

 たとえば、1993年のJリーグカレーのCMをリアルタイムで見たことがなかった人にも、その面白さや当時の盛り上がりが伝わるような企画に設計していきました。

 幸いにも今回企画を共に作り上げた外部の方々の中にもサッカー好きな人がいました。 そうした純粋なサッカーファンやJリーグのファン・サポーターから「面白い」という会話が生まれていたので、これは内輪ノリではなく、当初から目的としていた“Jリーグへの関心を高めること”につながると、と確信しました。
 

連動した複数のキャンペーン施策


―― 31周年の企画は、「復刻版Jリーグカレー2024年篇」のCM制作とJリーグカレーの配布だけでなく、複数のキャンペーンを連動させていました。それらについても教えてください。

 ただ単にJリーグカレーの復刻CMを制作し、スタジアムで配布することで、「Jリーグカレーが復刻しました」という一過性で企画が終わらないことが重要です。そのため、軸はJリーグカレーの復刻企画とし、多方面で露出し、Jリーグへの関心を高められるよう、さまざまな話題化の施策を展開していきました。

 その仕掛けは、大きく2つあります。ひとつ目は、SNSでの投稿キャンペーンです。懐かしさを感じてもらったり、当時のことを思い出してもらったりするために「#わたしのサッカーグッズ見て」とSNSで投稿してもらい、選ばれた10人に10万円、計100万円分のグッズを購入する権利をプレゼントするキャンペーンを仕掛けました。
 
 その中には、あるクラブのファン・サポーターで、家の倉庫に飾っているたくさんのユニフォームの写真を投稿してくれたり、数十体以上のクラブのマスコットを並べてきれいに撮影して投稿してくれたりする人もいました。ファン・サポーターのみなさんは、いい意味でご自身の「クラブ・選手への愛」を具現化したことで離反層も当時こんなことあったよね、と思い出すきっかけを生み出せたと思います。

 もうひとつはチームメンバーが発案した「31試合フルマッチライブ配信」という企画で、過去5年間のリーグ戦の中から31試合を選び、Jリーグ公式YouTubeとTikTokアカウントで、50時間くらい連続ライブ配信で配信しました。「あのときの試合をもう1度見たいよね」や「当時Jリーグに自分もハマってたな」など、懐かしさを想起させる狙いで企画しました。この企画も好評で多くのファン・サポーターにJリーグに触れていただく機会となりました。
 
 このように複数の仕掛けを「Jリーグの日」である5月15日に合わせて、助走しながら仕込んでおくことでJリーグカレーの復刻だけではなく、「Jリーグの日」そのものを盛り上げるように設計しました。

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