広報・PR #19

自民総裁選も間近、デジタル時代の選挙広報戦略 「X」活用の12戦略を解説

 

10. 支持者の自発的参加促進/口コミ拡散の活用


 選挙広報の広告予算は限られている。重要となるのが、支持者による自発的な情報拡散だ。候補者の投稿の重要性を説明し、支持者の判断で自主的にリポストやシェアしてもらうように呼びかけることが効果的である。

 この戦略を成功させるには、まず共有したくなるような価値ある情報や印象的なメッセージを発信することが大切だ。地域の課題に対する具体的な解決策や、候補者の人間性が伝わるストーリーなどが該当する。同時に、キャンペーン固有のハッシュタグを作成して、支持者に使用を促すことで、選挙活動の規模を可視化できる。

 その上で、支持者同士が交流できるオンラインコミュニティを形成し、情報共有や議論の場を提供する状態にまでつなげたい。候補者の演説や討論会などのイベント中に、リアルタイムで反応や感想を投稿するよう呼びかけることで、イベントの盛り上がりをオンライン上でも再現できる。

 たとえば、「この政策は地域の未来にとって重要です。皆様の周りにも広めていただけると幸いです」といった呼びかけを行う。また、積極的に情報を拡散してくれる支持者には個別に感謝の意を表すことで、継続的な協力を促すことができる。

 ただし、特定の見返りを示唆するような表現は避けなければならい。あくまでも支持者の自主性を尊重することが重要だ。支持者との信頼関係を築き、共に選挙戦を戦う仲間としての意識を醸成することで、長期的には最も効果的な選挙戦略となる。
 

11. オフライン活動とオンライン発信の連携


 選挙活動の多くが従来型のオフライン活動に依存している場合も、その活動をX上でリアルタイムに共有することで、選挙広報の効果をさらに高めることが可能になる。

 たとえば、街頭演説の様子を短い動画にして投稿したり、ポスター掲示場所をX上で告知したりすることで、オフラインの活動をオンラインでも可視化し広く共有することができる。こうしたオフラインとオンラインの連携は、有権者に対する候補者の活動とメッセージの伝達を網羅的に行うことができるため、選挙活動の一貫性を保つことにつながる。
 

12. 緊急時対応マニュアルの作成


 選挙広報活動において、クライシス対応は避けて通れない課題でもある。特に、誤情報の拡散やスキャンダルの発覚といった緊急事態に備えるためにも、事前に対応マニュアルを作成しておくことは重要だ。

 仮に、クライシスが発生した際には、公式アカウントが迅速に事実確認と初動対応を行い、候補者本人のアカウントがその後にフォローアップのメッセージを発信する必要がある。役割分担を予め明確にしておくことで、不要な混乱を避けることは可能だ。また、緊急時の対応シナリオを事前に準備しておきたい。少人数の広報支援チームであっても迅速に緊急時の対応ができる体制を整えることが欠かせない。
 

最後に


 デジタル時代の選挙広報は、テクノロジーの進化とともに常に変化している。しかし、その本質は有権者との信頼関係の構築にある。Xをはじめとするデジタルツールは、その関係構築を支援する手段の1つに過ぎない。限られたリソースの中での創意工夫によって、効果的な選挙広報を展開することができる。

 本記事で紹介した戦略は、あくまでも選挙広報の出発点である。選挙広報チームの状況に応じて、さまざまなオプションを検討し、状況に応じて段階的に実施していくことが何より重要だ。デジタルツールを味方につけ、有権者との有意義なコミュニケーションを実現することで、選挙戦を成功に導くことができるだろう。
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