CATCH THE RISING STAR #19

キンドリルジャパン立ち上げから携わる若きマーケターがこだわるブランディングと「勝ち取る」姿勢【立石汐南氏】

 

グローバルからいかに勝ち取るか


―― ブランディングに高いこだわりを持ち、積極的なコミュニケーションで多彩な企画を進めている様子が伝わってきますが、課題はありますか。

 やはりグローバル本社との調整に難しさを感じます。

 たとえば、キンドリルジャパンが設立して初めての新入社員を迎えた時、IT企業らしくテクノロジーを用いて、ゲーム感覚で楽しくキンドリルブランドを体感できるメタバース入社式を企画しました。

 当時、メタバースはトレンドだったので、この機会にSNSやメディアで取り上げてもらえる内容にしようと取り組んでいました。

 しかし、当時グローバル全体で初の事例で、プロセスが確立していなかったこともあり、グローバル本社との調整が難航し、外部への露出は断念せざるを得ませんでした。正直、露出できていたら認知度向上にも貢献できたかと思うと、悔しかったです。これを教訓として、以後のプロジェクトはグローバルとの連携や承認プロセスをしっかり意識し、余裕を持って進めるようにしています。

 全世界で一貫性を持ったイメージを保つため、グローバルとのコミュニケーションは必要不可欠です。ブランドガイドラインで定義しきれない箇所や、企業の成長とともに変わっていく箇所があり、グローバル本社とのディスカッションが欠かせません。

 そこで重要なのは「実行力」、いかにアイデアを実行に移すかです。ブランドガイドラインをしっかり踏まえた上で、グローバルに日本の文化や背景を含めて必要性を伝え、承認を勝ち取るしかありません。遠慮して言うべきことを言わないのではなく、積極的にコミュニケーションをとってPDCAを回すようにトライアンドエラーを重ねて、経験を蓄積していっています。

――新しいことにチャレンジし、より良いクオリティを求めて企画を推進している立石さんのポジティブで積極的なご性格はどのように培われたのでしょうか。

 私は双子で、生まれた時から「ライバル」がいたので、自然とチャレンジ精神が豊富で、向上心が強い性格になったのだと思います。

 0歳から飛行機に乗り、よく海外旅行に行っていたので、幼い頃から初めての土地で価値観の異なる初対面の人と接する機会が多かったということも、今の好奇心旺盛で積極的な性格を形成した理由のひとつだと思います。その中で、両親が趣味のスキューバダイビングに興じている間、さまざまな国籍や言語を持つシッターさんにお世話になったことが、グローバルに対する言語的・心理的ハードルの低さにつながっているのかもしれません。

――これから挑戦したいことや目標はありますか。

 キンドリルジャパンの立ち上げから関わっているので、ブランドマーケティングはもちろんのこと、担当領域以外にも貢献できることを見つけて主体的に取り組みたいと思っています。

 先ほど「失敗談」としてお伝えしたメタバース入社式も、メディア露出はできなかったものの、社内での評価は高く、その後も何度か、入社式や内定式にマーケティングの立場から関わりました。その中で自然と採用にも関心を持つようになったのですが、まだキンドリルジャパンの知名度が十分ではない中で、受け身だとどうしても応募者に伝わりません。採用もマーケティングの一環と捉えられていたこともあり、私も積極的に関わろうと、学生にアプローチする具体的な採用戦略を企画・立案しました。

 実はその後、グローバルの方針で採用に関わるマーケティング活動は停止するのですが、私たちマーケティングが関わった時の方が、応募数や内定者数が良い結果だったのです。そこで、効果的な採用活動をするにはマーケティングの関与もあった方がいいということを数値的に示し、今年からまた、採用に関わる活動ができることになりました。

 他にはアライアンスマーケティングにも携わっています。職種や部門を超えてプロジェクトチームを結成して、生成AIを活用したデモを作るなど、新しい取り組みも行っています。イベントにおいて、新しいテーマの講演や過去に実績のない仕掛けの展示を企画したことで、日本だけではなくグローバルでも同じものを使いたいと言ってもらえ、横展開することもできました。

 こういった固定概念や過去の慣習に囚われない、枠にはまらないアイデア出しも引き続き行っていきたいです。

 目標としては、さまざまな分野でマルチに活躍できる人材になりたいと思っています。

 グローバルの戦略とキンドリルジャパンとしての戦略の両方を把握し、その中でロードマップを描きながら、CMOのように各担当をつないで最大限の成果を出せる存在を目指したいです。

―― 本日はありがとうございました。


 

【上司の視点】型にはまらない柔軟な発想

 
湯口 真理子 氏 
キンドリルジャパン マーケティング ブランド&コンテンツ統括

 立石さんの強みは、その積極性で周りを巻き込み、型にはまらない柔軟な発想でこだわりを持ってプロジェクトを進めていくところです。今回のインタビューの中でも話にあった、コンテンツやグッズの作成、イベントの構成について、制限の中でできる最大値を生み出せるように工夫し、理想に近づけるための努力を惜しみませんでした。

 私の担当するブランド&コンテンツチームでは、キンドリルウェイ(キンドリルの行動指針)として定義されている、進化する、共感する、尽力する、を守り、さらに自らの範囲に責任を持ち、楽しく仕事ができることを目指しています。業務の専門性が高く、それぞれの担当範囲のプロフェッショナルであることが求められ、替えがききません。その厳しさがある一方で、自ら「やりたい」ということは積極的に実施できるように尽力しています。そうすることで、チームのみんなが、自らの仕事を楽しんで日々働けるとよいなと思っています。
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