「迷ったら、削る」グローバル戦略の描き方 #04

海外の広告・PR賞を席巻、味の素「冷凍餃子フライパンチャレンジ」が評価された3つの理由

 

ブランドの信頼性・一貫性:「永久改良」が生み出すオーセンティシティ


 ひとつ目の視点は、「ブランドの本質」です。冷凍餃子フライパンチャレンジの成功は、前述した味の素冷凍食品の「永久改良」という開発理念に深く根ざしています。つまり単なる危機対応ではなく、ブランドのコアとなる価値観を体現したプロジェクトでした。

 3500個以上のフライパンを集め、検証するという徹底した姿勢は「永久改良」の精神そのものです。その検証を「当たり前の取り組み」として推進する企業姿勢が、ブランドのオーセンティシティを示しています。

 消費者の問題や提言に真摯に向き合い、根本の原因を探ることは、ブランドへの信頼構築に不可欠なアプローチです。冷凍餃子がフライパンに張り付く条件を徹底的に調査し、そのデータをもとに製品改良を行うことで、消費者の期待に応えつつ、ブランドの信頼性を高めることにつながっています。

 新しいプロジェクトでは、企業やブランドの歴史との整合性や必然性が問われます。常に「なぜ我々はこの事業に取り組んでいるのか?」というWhyに向き合い、それを組織に浸透させることが重要です。
 
3500個以上のフライパンが集まった様子

 日々の取り組みの積み重ねが企業姿勢になり、企業の本質をつくり出します。そして、その評価がブランドを築きます。このプロセスこそが、プロジェクトのあり方やコミュニケーション展開の土台となるのです。そして、その土台に「永久改良」という開発理念があったことで、プロジェクトに信頼性と一貫性を与えられたのです。
 

プロセスの透明性:オープンなプロジェクトが紡ぐ消費者との絆


 2つ目は、「コミュニケーション戦略」という視点です。このプロジェクトの重要なポイントは、そのプロセスの透明性にあります。デジタル化が進み、情報が瞬時に拡散するため、個人や法人を問わず、嘘や誇張はすぐにバレてしまう世の中になりました。その結果、消費者は、企業の取り組みについて高い透明性を求める傾向があります。

 冷凍餃子フライパンチャレンジでは、フライパンの収集から商品改良プロセスまで、そのすべてを公開する戦略をとりました。このオープンな姿勢は、消費者の信頼を獲得し、参加性を高めることにつながっています。調べれば何でも探せる時代だからこそ、調べても見つからないことへの不信感を避けるために、プロセスの透明性を確保することが重要です。

 味の素冷凍食品は、フライパン提供者や顧客への感謝の気持ちを示しながら、その進捗を都度公開していきました。「永久改良」という企業姿勢を土台として、「どんな取り組みをしているのか?」というWhatの部分を積極的に公開していくことで、さらなる信頼獲得に繋がったと言えるでしょう。
 
「永久改良」を通して冷凍餃子フライパンチャレンジの途中経過を伝えるnoteの記事(※参考記事)

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