新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #08

「ゴジラ-1.0」制作のROBOT、小さな広告企画会社が世界に認められるコンテンツメーカーになれた理由

 

映像制作会社から「コンテンツメーカー」へ


徳力 ROBOT創業者の阿部さんは広告から事業を始め、「映像を商品にする会社」と自社を定義されていたということですが、事業領域がますます広がった今、自社のドメインは何だと定義されているんですか。

福崎 これは徳力さんに相談したいくらいなんですが(笑)、「コンテンツメーカー」というのが、いちばん腑に落ちるかなと思っています。

徳力
 なるほど。その表現はわかりやすいですね。コンテンツが中心だから、チャネルとか業界の壁にとらわれず、「映画をやるぞ!」となったら映画をつくるし、デジタルの時代が来たらホームページ作成などデジタルの仕事もすると。

福崎 映像業界には「30センチ(パソコン)、3メートル(テレビ)、30メートル(映画館)」という言い方がありましたが、「踊る大捜査線」の時などは、映画本編だけでなく、コミュニティサイトから「捜査員」と呼ばれるファンのオーダーメード名刺まで手がけていて、いわゆる「クロスメディア」の先駆けのようなことをしていました。

徳力 あのコミュニティサイトは非常に盛り上がったそうですね。インターネットが普及し始めたばかりの頃は、まだ多くの映像制作会社はWebサイト制作をやりたがらなかったと聞いています。ROBOTさんは時代を読んで、きちんとやっていた。社内にはそういう、さまざまな分野に挑戦するカルチャーがあったんですか。

福崎
 やりたいからやっちゃう、というところは昔からあります。阿部の口癖で、アンオフィシャルな社是が「じゃあやれよ」なので。本人の自伝的著書のタイトルは、少し上品に「じゃ、やってみれば」(日本実業出版社)になっていましたが(笑)。

徳力 面白いですね。サントリーさんの「やってみなはれ」のような感じを受けます。やりたいならやってみればいいじゃない、ってことですね。

福崎 まさにそれです。面白いと言って手を挙げたからには、責任を持ってやろうよ、という意味でもあると思います。社内にはそういった企画があふれています。

徳力 一連の話で、すごく腹落ちしました。これまで時々、「何でROBOTさん、こんな仕事もやっているんだろう」って謎に思うことがあって。普通はノウハウがないと「ウチはできない」になりがちですが、ROBOTはコンテンツメーカーだから、クライアントのニーズに合うとなれば、先ほど来社した際に出してくれたりんごジュースでさえも…。

福崎 「じゃあやる」んですよ(笑)。りんごジュースは長野県の「Fujiwara roots farm」さんと共同開発したものです。傷やサイズの関係で市場価値が難しいりんごを使用したジュースで、ラベルにスマホカメラをかざすと、ARアニメーションとメッセージが表示されます。プロダクトにコンテンツを融合させて新しい体験を生み出すアイデアで、「プロダクトテインメント©︎」と呼んで鋭意開発中です。
  
ラベルにスマホカメラをかざすと、アニメーションやメッセージを見ることができる。飲んで美味しいだけでは終わらない、新しい商品体験。(写真提供:ROBOT)

※後編へ続く
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