TOP PLAYER INTERVIEW #77
サブスクにAI、苦情の次世代化…50年を迎えた広告審査機関JAROが向き合う広告の信頼性への課題
「苦情の次世代化」
―― 若年層への認知拡大も課題と聞きました。
その通りです。50周年の記念プロジェクトのひとつとして「未来課題チャレンジ」と銘打って、JAROの公式SNS(TikTok、YouTube)で「広告苦情、 動画にしてみた」というお題の動画を連続公開しています。
若い人にJAROを知ってもらうとともに、悪質な広告に騙されないリテラシーを養ってもらうのが狙いです。今年4月から毎週1本ほど公開していて、全50本を目指しています。動画をつくっているのはZ世代のクリエイターで、インフルエンサーを使ったりドラマ風にしたりしています。
JAROは新聞広告やテレビCMの「JAROってなんじゃろ?」という広告や、「ダメダメ3匹」のキャラクターでPRしてきました。おかげで認知率は2024年度に67.0%となっています。50代以上の層には80%以上ですが、若い世代に限ればまだまだ知られていないのが実情でしょう。
JAROの審査機能は苦情の相談があって初めて発動するので今後、特に10代後半から20代の人々にJAROを知ってもらい、かつ問題のある広告への関心を高めてもらう活動は、非常に重要だと考えています。これを私たちは「苦情の次世代化」と呼び、取り組んでいます。
この一環で、私が客員教授を務める駿河台大学メディア情報学部の学生にも、悪質広告について消費者の注意を促す啓発動画をつくってもらいました。
まず嫌な広告を学生に書き出してもらい、考えたコンテに基づいて20分で撮影、30分で編集してもらうという講義です。学生も楽しみながら広告について考えることができると好評だったので、中高生にもチャレンジしてもらおうと、角川ドワンゴ学園のN中等部とN高等学校・S高等学校の課題解決型プログラムにも取り上げてもらいました。博報堂が協力し、Z世代によるクリエイティブチーム「ハローZ」が動画制作のポイントなどを指導しました。希望者には動画コンテストも行い、入賞作品はJARO公式SNSで公開したいと計画しています。
―― 悪質広告を無くすために必要なことは何でしょうか。
JAROの創設理念でも説明しましたが、広告とマーケティングの世界で長く働いてきた私も、広告表示が適正になされることが、経済や企業の成長にとってすごく大事だと実感しています。
そのためにはJAROだけでなく、みんなが力をあわせる必要があります。まずは広告主自身が適切な広告を出すことを意識する。媒体社は問題のある広告を受け付けない。広告会社も問題のある広告をつくらない。それぞれの立場でできることをやるのが、第一です。
その上で、これらのステークホルダーが集まって、より良い広告を増やしていくために力を貸していただけたらと思います。
ちなみに、JAROは広告・表示に関する苦情だけでなく、「感動した」などの良い意見も受け付けています。こちらもお待ちしています。
―― 良い意見が寄せられる広告が増えるといいですね。本日はありがとうございました。
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