広報・PR #21
日本マクドナルドに匹敵する規模を目指すワタミとサブウェイの融合、今後の展望と課題への対応策
2024/10/29
10月25日、ワタミがサンドイッチチェーン世界大手「サブウェイ」の日本事業を買収し、フランチャイズ展開を開始するというニュースが飛び込んできた。かつて、日本マクドナルドでマーケティングやPRの業務を務めていた私としては、この動きに大きな期待を寄せている。
海外でのサブウェイ体験とその魅力
私は北米や東南アジアを訪れるとき、必ずと言っていいほどサブウェイに足を運ぶ。海外の飲食店は脂っこい料理が多く、特に長期の出張になるとカロリー過多や胃もたれが心配になるからだ。その中で、サブウェイの新鮮な野菜をたっぷり使ったサンドイッチは、とてもありがたい存在になる。それに加えて、実は私は野菜に多少の好き嫌いがある。サブウェイではピクルスを抜いて、オリーブを増やしてといった注文も気軽にできる。私にとっては、自分好みにカスタマイズできることが本当にありがたい。このカスタマイズ性は、他のファストフードチェーンではなかなか味わえないサブウェイならではの魅力だと感じている。
ワタミの戦略的多角化とブランドシナジー
一方、ワタミはこれまで宅配給食や居酒屋事業を中心に展開してきた。特に「ワタミの宅食」は高齢者向けの配食サービスとして定評があり、居酒屋チェーン「和民」は一時期、業界トップクラスの店舗数を誇っていた。しかし、時代の変化に伴い、消費者のニーズが多様化し、健康志向や手軽さを求める傾向が強まっている。さらに、コロナ禍による外食産業の打撃もあり、ワタミにとって新たなビジネスモデルの模索が急務となっている。私の考えでは、ワタミはファストフード業態であるサブウェイを取り入れることで、これまでリーチできなかった新たな顧客層を開拓し、特に健康志向の高い若年層や働く女性をターゲットにできることが収益基盤の強化につながると考える。サブウェイのカスタマイズ性や新鮮な野菜を活用したメニューは、現在の市場トレンドとも合致している。ワタミの既存のサプライチェーンや店舗運営のノウハウと組み合わせることで、シナジー効果を生み出す可能性が高い。
特にワタミが持つ有機農業のノウハウやサプライチェーンを活用することで、サブウェイの商品価値をさらに高めることができる。自社農場で育てた新鮮な有機野菜を使ったサンドイッチは、健康志向の消費者にとっては十分に魅力的だろう。競合他社との差別化にもつながるはずだ。
フランチャイズ展開と市場シェアの拡大
ワタミ 代表取締役会長 兼 社長 CEOの渡邉美樹さんの「20年かけて3000店を目指す」という意気込みを聞いて正直驚いた。これは日本マクドナルドに匹敵する規模である。しかし、フランチャイズ展開によって初期投資を抑えながら、迅速な店舗拡大を図るという戦略は、理にかなっていると感じる。もちろん、急速な拡大には品質管理やオペレーションの統一性といった課題も出てくるだろう。しかし、ワタミは多店舗経営で培った効率的な店舗運営ノウハウを持っており、これが活きてくると考える。従業員の教育システムやマニュアルの整備、品質管理の仕組みなどを活用することで、急速な拡大でもサービスの質を維持できるだろう。
マーケティング戦略と日本市場への適応
私がマクドナルドで働いていた頃、健康志向の高まりを受けてサラダメニューの強化を試みたことがある。しかし、残念ながらヘルシーメニューが主流になることはなかった。消費者がマクドナルドに求めるものとヘルシー志向が必ずしも一致しなかったのだ。一方で、サブウェイはそのブランド自体が健康志向であり、カスタマイズ性という強みも持っている。これは、先ほど述べたように日本の消費者ニーズに合致している。もしサブウェイが1000店舗を超える規模にまで成長すれば、マクドナルドにとっても大きな脅威になるだろう。
ただし、日本市場で成功するためには、メニューの徹底的なローカライズが不可欠である。サブウェイは「てりやきチキン」や「えびアボカド」といった日本人好みのメニューを開発し、高い人気を得ている。ワタミもまた、日本の飲食市場に精通しているからこそ、新たな商品開発やモーニングメニューの導入など、時間帯ごとの需要に対応した戦略を展開できる可能性がある。