マーケターズ・ロード 笹本裕 #01

元Twitterジャパン社長の笹本裕氏が語る、逆境を乗り越える思考術

 

2週間で7000人もの社員が会社を去った


―― 日本の閉塞感やガラパゴス化の話を伺いましたが、イーロン・マスク氏によるTwitter買収劇では、グローバル視点での大胆な変革が進められました。その過程で、最も衝撃的だったエピソードを教えてください。

 きわめて短期間のうちに、8000人近くいた仲間が1000人にまで減ってしまったのは非常に衝撃的な出来事でした。わずか2週間ほどで大量の人員が次々と去っていくのは、世界的にも類を見ない事象だったのではないでしょうか。巨大テック企業として知られるTwitterが突如として非上場化され、未公開会社として一気にリストラが行われた。このような事例は、他に比較対象がないことだと思います。

 社内ではSlackでコミュニケーションをとっていましたが、そのメンバーの数が日を追うごとにどんどんと減っていくのです。昨日と比べて200人、300人と減っているのがだんだんと「普通のこと」に感じられてしまう状況でした。精神的にも感覚が麻痺していきました。
  

 たとえば、私は当時アジア太平洋地域の統括責任者という立場でしたが、上司が4週間のうちに5人も変更し、最終的には私自身がイーロンに直接レポートする立場になりました。これほど急激な変革は、一般的な組織論では考えられないことですよね。

 私自身も、そして周囲の社員も初めての経験だったので、喪失感や恐怖感はもちろんのこと、さまざまな感情がこの数週間で湧き上がりました。当時、私は拠点をシンガポールに置き日本と行き来して業務を進めていましたが、1000人、2000人と社員がいなくなっていくので、社内外から「何が起きているんですか?」という問い合わせが殺到していました。

 私の立場上、言えることと言えないことがありました。そのため、ご迷惑をおかけした人々に対しての申し訳なさや、自分の無力さを痛感する瞬間もありました。長い人生とキャリアの中でも、この215日間はかつて経験したことのない時期でしたね。

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