TOP PLAYER INTERVIEW #79
「3秒で買わせる店頭」から「心をつかむEC」まで、カンロのマーケティング改革の真髄【内山妙子氏】
キャンディ(飴やグミなど)市場が伸長している中、カンロでは「カンロ飴」や「金のミルク」、「ピュレグミ」などを販売し、売上・利益ともに過去最高を更新している。2024年度上期の営業利益は前年同期比32.2%増となり、当初の予想を上回る成長を見せている。
今回は、同社 常務執行役員 マーケティング本部長の内山妙子氏にインタビューを実施。キャンディ市場を牽引し、シェアを拡大するためのマーケティング戦略とは何か。前編では、Z世代に向けてマーケティング活動とECや直営店、デジタルマーケティングなどの取り組みについて紹介した。後編では、顧客起点でオンライン、オフライン問わずブランド価値向上や売上・利益を拡大するためのカンロの強みと今後の展望などを詳しく聞いた。
今回は、同社 常務執行役員 マーケティング本部長の内山妙子氏にインタビューを実施。キャンディ市場を牽引し、シェアを拡大するためのマーケティング戦略とは何か。前編では、Z世代に向けてマーケティング活動とECや直営店、デジタルマーケティングなどの取り組みについて紹介した。後編では、顧客起点でオンライン、オフライン問わずブランド価値向上や売上・利益を拡大するためのカンロの強みと今後の展望などを詳しく聞いた。
各チャネルの連携で「カンロ」としてのブランドを構築
―― 現在の貴社の強みを踏まえて、マーケティング戦略の中でも特に重視されていることを教えてください。
当社にはスーパーマーケットやコンビニエンスストア、直営店、ECといった多様な販売チャネルがあり、幅広いお客さまと接点が持てる点が強みだと思います。菓子業界は老舗企業が多く、店舗に多くの商品を並べて、マス広告を打って認知向上を図り、購入していただくビジネスモデルが中心です。ただ、当社では直営店やECというチャネルもあるため、それらのチャネルを連携させて施策の幅をより広げることが可能です。
カンロ 常務執行役員 マーケティング本部長
内山 妙子 氏
デザイナーとしてカンロ入社後、マーケティング業務に従事。2012年カンロ百周年事業として直営店「ヒトツブカンロ」の立ち上げに参加、2017年には40年ぶりとなる新CI導入を推進するなど、カンロの転換期に数多く関与。2018年からはカンロ初の女性執行役員としてコーポレートコミュニケーション本部長に就任。2021年デジタルマーケティング推進プロジェクトのプロジェクトマネージャーとして、ECやコンタクトセンターなどを包括するデジタルプラットフォーム「Kanro POCKeT」構築に携わり、2022年か-らは新設されたデジタルコマース事業本部の本部長も兼務。 2024年よりマーケティング本部長。
内山 妙子 氏
デザイナーとしてカンロ入社後、マーケティング業務に従事。2012年カンロ百周年事業として直営店「ヒトツブカンロ」の立ち上げに参加、2017年には40年ぶりとなる新CI導入を推進するなど、カンロの転換期に数多く関与。2018年からはカンロ初の女性執行役員としてコーポレートコミュニケーション本部長に就任。2021年デジタルマーケティング推進プロジェクトのプロジェクトマネージャーとして、ECやコンタクトセンターなどを包括するデジタルプラットフォーム「Kanro POCKeT」構築に携わり、2022年か-らは新設されたデジタルコマース事業本部の本部長も兼務。 2024年よりマーケティング本部長。
たとえば、今後の販売戦略として、ECで売れた商品をナショナルブランド(全国規模で広く展開されているブランド)として展開することや、逆にナショナルブランドで販売した商品を少しアレンジしてECで販売するなどが考えられます。店頭販売でお客さまは商品を見て3秒程度で買うかどうか決めていると言われますが、デジタル上ではその商品のストーリーも伝えられます。そのあたりに、チャネルを相互連携するメリットがあると考えています。
今後は「ピュレグミ」や「金のミルク」などの各ブランドを、カンロという会社として大きな傘の下に位置づけ、各ブランドとしての認知に加え、カンロの商品であることを知ってもらうことを重視していきます。また、商品開発においてもターゲットが重複しているブランドも存在するため、その整理も必要であると考えています。
カンロ飴やピュレグミなどおなじみの商品に加え、ECサイトでしか購入できない限定商品を販売している「Kanro POCKeT オンラインショップ 」
―― オンライン、オフライン問わず顧客起点を強化する上で、貴社として重要視していることは何でしょうか。
お客さまにとって新しい価値をいかに創造していくかを重要視しています。飴は、なめて美味しい以外の体験価値があると思います。その価値を提供できる商品をつくり、環境を整えて、お客さまとコミュニケーションを取っていくことを大事にしたいです。
その一例が、原宿にある「KanroPOCKeTラボ」です。ここでは「KanroPOCKeT」と連動した情報発信の拠点として、会員向けにファン同士の交流も促すなど、オンラインをオフラインと融合する施策を進めています。
東急プラザ原宿「ハラカド」の「Kanro POCKeTラボ」(2024年12月17日時点)
さらなる体験価値を創出するために、チームメンバーに対しては外部のイベントやカンファレンスに参加し、業種業界の異なるステークホルダーと関わりを持ち、その中で多くの刺激やインプットを得てくることを推奨しています。それは外部からのインプットからでしか、アウトプットは出せないと考えているからです。良いアイデアが出れば、会社の転機にもつながると考えています。
また、社内報の発信内容やトップメッセージの伝え方など、インナーコミュニケーションも大切にしています。メディアへの露出に関しても、以前は1年に1回、会社としてテレビに出ればいいほうでしたが、最近はグミなどの商品をPRで取り上げていただく機会がとても増えています。自分の会社のニュースをテレビで観ることは、社員としても嬉しいと思います。