TOP PLAYER INTERVIEW #80

競争激化の保険業界で「尖った顧客体験」を追求、SOMPOひまわりCDOが語るLTV向上の秘策

 

顧客の健康を応援するメリットとは


―― 営業時代のお話がありましたが、西川さんはどのようにDXに関わってきたのですか。

 よく「データ系の会社から転職してきたの?」と聞かれますが、私は1995年に新卒で当社に入社し、生命保険一筋です。最初の5年間は代理店営業を務め、2000年からはインターネットを通じてお客さまに直接、保険を提案するダイレクト事業を12年間担いました。

 生命保険は顧客との長い関係を築き、いわゆるLTVを積み上げていくビジネスです。かつては営業も「勘と度胸と経験」が重要と言われましたが、私はデータを活用することで次の打ち手が瞬時に分かり、実行と結果を照らし合わせて高速PDCAを回しながら、お客さまとのCRM(顧客関係管理)を推進していくことが効果的であると実践から学びました。

 自分では「営業の科学化」と呼んで、ここでの経験をキャリアの背骨としています。その後、ヘルスケア事業やCX(顧客体験)の企画を7年やり、再びの営業を経て、2022年にCDO(最高デジタル責任者)になったのですが、データを使って仕事を変える、ビジネスを変える、会社を変えるということを意識して、取り組んでいます。
  

―― 貴社は2022年に生命保険会社で初めてLINEで保険加入手続きが完了できるシステムを導入するなど、DXの先進的な取り組みを進めている印象ですが、どんなきっかけがあったのですか。

 最も大きかったのは2016年に掲げた「従来の保険会社から健康応援企業への転換」です。生命保険会社が、お客さまが健康になるのを応援するのはなぜなのか? と、よく聞かれます。SOMPOグループのパーパス「〝安心・安全・健康〟であふれる未来へ」に対して、「健康応援企業」である当社の事業として生み出される価値は大きく2つ、社会的価値と経済的価値があります。

 前提として、日本は少子高齢化で保険制度の持続性が問われています。この社会課題に対して、まず健康寿命を伸ばすことで貢献します。健康寿命が平均寿命に近づけば入院する人が減り、医療費の低減に繋がりますし、元気な高齢者が増えて生産年齢人口が増えれば社会保険の担い手が増えます。これが社会的価値への貢献です。

 次に会社の経済的価値としては、お客さまの健康を応援して、健康なお客さまが増えれば、その結果として、給付金の支払いが減ることが期待できます。ただ、これにはかなりの時間が必要だと考えています。一方で、お客さまに健康になっていただくためには、私たちはお客さまとの長いお付き合いの中で最適なコミュニケーションを重ねていく必要があります。先ほど、マーケティング的な観点での「MYひまわり」の狙いをお話しましたが、お客さまとの健康に関するコミュニケーションを通じて、時には保障の見直しや追加の契約へのご加入、時にはご家族や知人を紹介していただいたり、さらにはSOMPOグループが提供するウェルビーイング・ヘルスケアサービスなどもご利用していただくことに繋がっていきます。

 要は、お客さまとの関係がより深く、太くなっていくことで、SOMPOグループ全体でお客さまのLTVを最大化できることが経済的価値なのです。そして、そのために必要なデジタル・データを最大限活用していくことが当社のDXであり、お客さまとのコミュニケーションプラットフォーム、LTVを最大化するプラットフォームとして期待しているのが「MYひまわり」です。

―― 顧客との関係を維持・発展させる促進剤として、アプリなどのDX戦略があるのですね。

 その通りです。私はDXの「D」よりも「X」のほうが大事だと考えています。DXの正しい概念は「ビジネストランスフォーメーション・ウィズ・デジタル」だと思います。既存のやり方をデジタルに置き換えるのではなく、今までなかったものをつくり出す、良き方向に変えていくこと。データとデジタルを手段として駆使して、生命保険のバリューチェーンの各領域の部門の人々と一緒に、既存のビジネスモデルを「健康応援企業」にふさわしい事業モデルに変えていく。この「BX(ビジネストランスフォーム)」を推進していくのが私の役割です。

「健康応援企業」としてお客さまに提供してきたものがインシュアヘルスで、2018年以降計11のインシュアヘルスをつくり、累計170万件の契約となり、事業ベースで1200億円の年間保険料をいただくまでに成長しました。多くのお客さまに支持をいただけていると思っています。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録