TOP PLAYER INTERVIEW #81
初速が目標の3倍。シャウエッセン ®「夜味」誕生の秘話とは? 日本ハムが引き出した新たなインサイト
「普通のシャウエッセン」への回帰
―― 「夜味」の反響に対して、社内では驚きを持って受け止められたとのことでしたが、発売前に社内ではどういった声があったのでしょうか。
社内からは、そもそもの味や焼き調理をすることなどに対して、正直のところ否定的な声も多かったです。特に、従来のシャウエッセンと比較して「確かに濃い味付けだけれど、これなら普通のシャウエッセンでいいのではないか」という意見が非常に多かったです。
過去にも新しい味を出そうと試みて、結局は「普通のシャウエッセンでいい」という結論になるということが度々ありました。たとえば「おでんに入れるとおいしいウインナー」として、煮込むと出汁を吸いやすくなる配合のウインナーをつくっても「普通のシャウエッセンをおでんに入れたらいい」と、ボツになったこともあります。普通のシャウエッセンが、いかにいろいろな料理に使えるかということの裏返しですが、新しい味の投入には高いハードルがあったのです。
「夜味」でもやはり、同様の議論が起こりました。しかし、先ほど話したように消費者の間では「シャウエッセン=朝食または昼の弁当」という固定観念が非常に強いです。顧客の行動を変えるには「普通のシャウエッセンを夜に食べてください」というプロモーションや店頭POP、メニュー提案などの販促施策では不可能。そのことを社内で説明し続け、空気が変わったのは「夜味」というネーミングが出てからです。最終的には社長である井川にプレゼンし、夜シーンの開拓という狙いと訴求ポイントは十分に理解できるということで背中を押してもらいました。
結果的に、発売後のお客さまの反応は「これなら普通のシャウエッセンでいい」という意見は思ったほど多くなく、「確かに焼くと美味しい」「濃厚で夕食に合う」といった肯定的な意見を多くいただいています。
―― 「夜味」は2025年1月末までの期間限定販売となっています。販売終了後は、どのような展開を考えているのでしょうか。
今回、「夜味」を出したことで「夜にもシャウエッセン」という食シーンの開拓に一石を投じることができました。「夜味」の終了後も、従来のシャウエッセンを夜に食べてもらうための訴求は継続していきたいと考えています。2024年7月からは発売40年目を記念して、従来のウインナーの枠を飛び出す「#ちゃうエッセン」プロジェクトを開始し、シャウエッセンを使った料理を出すお店を紹介する「#シャウ名店」を皮切りに、さまざまな話題化の施策を展開しています。
シャウエッセン発売40年を記念した「#ちゃうエッセン」プロジェクトの広告。「シャウエッセン=ウインナー」の固定観念から宇宙へ飛び出していくことを表現している
一方で、これら新しい味の投入や話題化のプロジェクトの最終目標は、実は「普通のシャウエッセン」のブランド価値向上にあります。「#ちゃうエッセン」プロジェクトでは「『シャウエッセン=ウインナー』という固定観念にはもうお別れ」と謳っているのに矛盾するようですが、私たちが確立したいのは、冒頭にお話ししたような価格変動などでは揺るがない「ウインナーと言えばシャウエッセン」という圧倒的なポジションなのです。
そのためには、普段からシャウエッセンに対して関心を持っていただき、想起してもらえる存在になることが必要です。これまでカバーできていなかったターゲットや食シーンを目指した商品展開やプロモーションをどんどん行っており、たとえばロースハムの代わりに使えるハムのようなの「シャウスライス」のほか、サラミのような常温のシャウエッセン「ドライシャウ」は、お酒にあわせた食シーンに特化した商品としてテストマーケティングでは上々の反応をいただいています。
これらはすべて「シャウエッセン」というキーワードに触れていただく施策で、最終的にはベースの「普通のシャウエッセン」に回帰していただきたいという思いがあります。シャウエッセンが永続的にファンを増やし、あらゆるシーンで誰にでも食べ続けていただけるような未来を目指します。
―― 本日はありがとうございました。
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