2025年マーケティング業界の展望 #01
トップマーケターが語る2025年の展望【音部大輔氏】
2025/01/01
2025年が始まった。生成AIが日常に溶け込み、テクノロジーや社会情勢の激変に伴うマーケティングの変化も避けられない中で、事業成長を担うマーケターは何を見据え、目指せばいいのか。2025年のマーケティング領域における展望をトップマーケターが語る。
生成AIを使いこなす「言葉」の重要性
音部 大輔 氏
クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役
クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役
2022年末に一般公開されたChatGPTに、GPT-4が搭載されたのが2023年の春でした。それから1年半ほどの間にAIの実装がさまざまな領域で進みました。日常の仕事に使うことも、あっという間に特別なものではなくなりました。
個人的な話ですが、2024年にはAIに関連した登壇や対談に5、6回お招きいただきました。準備のためにAIに関する本を随分と読み、海外モノを含むYouTubeをたくさん見て、専門家たちにいろいろと教えてもらいました。まったくの新領域について勉強するという、久しぶりの体験です。基本的な理解があることで、未知の領域でもずいぶんと親しみやすくなるというのは、あらためて意義深い体験でした。苦手意識がないというのは、新しい適応にとって大きなアドバンテージです。大型バイクに乗るためには相応のスキルや経験が必要ですが、自転車に乗ったことがあれば想像はできます。ぼんやりとでも仕組みが分かれば、使い方なども見えてくるかもしれません。説教臭い話ですが、やはり勉強は役に立つものだと再認識しました。
さて、そうしたAI議論の中で、生成AIをうまく使える人とそうでない人の差、などという話が出てくることがあります。ひとつの示唆として、言葉の使い方の巧拙なども指摘されます。
私たちが英語で話すとき、分かりやすい英語を話す英語話者と、分かりにくい英語を話す英語話者がいます。英語を母国語としない人たちと多く接してきた方は、言葉の選び方が調整されていて、英語を母国語としない私たちにも分かりやすく話すことができます。反対に、英語を母国語としない人としか接してこなかった人たちの英語を理解するのは相当に難しいです。どうやらこれは、スキルのようです。
日本語を母語とする私たちが、日本語を勉強し始めたばかりの方と日本語で話すのも、同じように難しいものです。さらに、お互いに日本語を母語としていても、円滑な意思疎通は簡単ではありません。言葉をうまく使えるというのは、結構大変なスキルなのです。そしてこの時代には、うまく言葉を操ることができると、部下や同僚と意思疎通しやすいだけでなく、AIを使いやすいかもしれません。
いままで国語や言語の力は、「もっとも人間らしいスキル」のひとつとして、とても重要だと理解していました。とはいえ、それは漠然と「教養として大事」という程度の認識でしたが、AIの力をうまく使ううえで、決定的なスキルであるかもしれません。少なくとも、いまのところは。
まさか2025年に「国語が大事」などという文章を書くことになろうとは、数年前には想像していませんでした。理解しやすく、解釈の余地なく、効率のいい言葉を話し、書けること。いわば「言葉使い」(丁寧に話せるという意味の「言葉使い」ではなく、猛獣使いと似た用語としての「言葉使い」)のスキルは、その重要性があらためて認識されるのではないかと思います。
加えて、今年あたりから「AIエージェント」という概念を耳にする機会が増えるかもしれません。現時点では、消費者が日常生活で使うのではなく、ビジネスユースが中心だ、という見解が大勢を占めている印象です。
もしもAIエージェントが消費者である私たちの日常に浸透すると、随分とあたらしい世界が広がりそうです。今年来年あたり、ぜひ意識してみてください。開発当時は、個人が使うとは思われていなかったパーソナルコンピューターも、携帯電話も、いまでは大勢の人がもっています。なにが起こるか分かりませんし、予想なんてそうそう当たるものではありませんけれど。
新しく始まった2025年が、みなさんと社会にとって、記憶や記録に残り、大いに力を発揮できる、すばらしい一年になりますように!
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