マーケターズ・ロード 笹本裕 #04
Twitter創業者ジャック・ドーシーから学んだパーパスの重要性【DAZN Japan笹本裕】
Twitter創業者ジャック・ドーシーが掲げるパーパス
Twitterでは創業者であるジャック・ドーシーの思想に強く惹かれました。彼と一緒に働く中で、マーケティングの視点から学んだことを紹介します。
ジャックは、まず企業のパーパスを明確にすることを重視していました。当初のTwitterは、スタートアップとして「こんなものがあったらいいな」という感覚でつくられたため、必ずしも明確なパーパスがあったわけではありません。しかし、ユーザーが増えるにつれて、この事業にはどのようなパーパスが必要なのかを考えて、最終的に策定しました。
次に、そのパーパスに対するバリュープロポジション(Value Proposition:企業が顧客へ提供する価値)を明確にしました。私も全世界から集められた20人のメンバーのひとりとしてバリュープロポジションの策定に携わりました。Twitterのパーパスが「世の中の会話を促すこと」なので、その会話がマーケターにとってどのような価値があるのか、米国のニューヨークで1週間ほどかけてさまざまな人と議論し、骨子を設計しました。
その結果、「会話」にはさまざまなモーメントとの親和性があることに気づきました。たとえば、日本では新年に「あけおめ」とツイートする習慣があります。新年というモーメントとTwitterには親和性があるということです。それはクリスマスやバレンタインデーなど、他の季節のイベントでも同様です。
このように人々の感情がモーメントとなり、それと関わることができる場所がTwitterであるという点は、Twitterにしかないバリュープロポジションでした。つまり、そのモーメントに対して、マーケティングのメッセージを重ねることで人々の感情移入を促し、それがTwitterという場所で拡散されるという価値が提供できると考えました。
Twitterでの情報の伝播速度は、テレビなど従来のメディアよりも速いことが調査で明らかになっています。つまり、新しい商品やサービスを発表する企業にとって、Twitter上でプロモーションを行うことで情報が素早く伝播するというバリュープロポジションを提示できます。
その中でジャックは、「Simple is best.」という方針を貫きました。そのひとつの例が、Twitterのアプリではスマホ画面の下部のボタンを4つ以上つくらないという決まりです。これは人間の感覚として、ボタンが多すぎると投稿のハードルが上がってしまうからです。直感的に操作できるアプリにすることで、会話を促進する原動力につながるという考え方に基づいています。