マーケターズ・ロード 笹本裕 #05
DAZN Japan笹本裕氏が伝える、現代のマーケターに必要な「時間軸」の思考法
破壊や創造は「時間軸」で考える
―― 最後に、マーケターや経営者などのビジネスパーソンに向けてアドバイスをお願いします。
現在の日本にある資源や仕組みのうち、生かすべき部分と変えていくべき部分を明確に定義し、それに対するソリューションに勇気を持ってトライしていくことが重要だと考えています。
世の中の問題を定義することは、場合によっては過去を否定することにつながるかもしれません。その問題に関わる人や関係者にとっては、解決策を講じることで、今までと同じように働いたり生活できたりすることが難しくなる可能性があります。しかし、日本の状態に問題があるのであれば、それを壊さなければ、真の進展は望めません。
イーロンの優れている点は、「リニア思考(線的な考え方)」をしないことです。従来のように1をつくって、その上に2や3を積み上げて、最終的に5や10になるという考え方をまったくしません。むしろ、いきなり1から10にいくように、現在地から目標地点に到達するために、既存のシステムを破壊してでも最短の方法を考えます。そのため、これまでのやり方を続けてきた人々は否定されることになります。
私は、これを「時間軸」の問題だと捉えています。イーロンは一人ひとりの人間には興味がありませんが、人類を救うことには興味があります。人類を救うための時間が限られているからこそ、我々には考えられない大胆な行動を取るわけです。
もしかすると、日本という国にもタイムリミットがあるかもしれません。今の日本を根本から変えていく必要があるとすれば、皆さんの事業やビジネスについても現行の方法で将来的に成功できるのか、時間軸の観点から再検討する必要があるのではないでしょうか。
日本は他人を尊重するという素晴らしい文化を持っていますが、その尊重のし過ぎが時としてデメリットになることがあります。先輩のやり方を踏襲しながら、次のステップを考えるというアプローチはよい面もありますが、場合によっては同時に問題意識を持たなければなりません。リニア思考で連続的に積み上げるだけでは、将来的に成果を生み出せない可能性があります。
多くの企業にとって最終的なゴールは、持続可能でスケールする商品やサービスを提供することです。そのためには、過去や現在の方法にこだわらない視点も必要です。
イーロンがTwitterで示したような「破壊」という言葉は大げさに聞こえるかもしれません。しかし、人類を救うために時間軸を短縮しようとすると、ときに何かを破壊し、その上で創造する必要が生じます。時間軸の捉え方は個人や国によっても異なるため、日本なりの時間軸をどのように見出すかは、私たち全員で真剣に考えていくべき課題だと思います。
単に破壊するのが最善策というわけではなく、逆に超長期でゆるやかに変わっていくのが正解でもありません。「新生ジャパン」としての時間軸という考え方が、正しい時間軸の捉え方かもしれません。我々は今、そのことを真剣に考えなければならない重要な時期に直面しているのではないでしょうか。
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