TOP PLAYER INTERVIEW #83

「異彩」のブランド・ヘラルボニー 躍進の秘訣と成長戦略、くまモンの先に目指すキティちゃん

 

目標は「キティちゃん」


―― ヘラルボニーは2024年、革新的なスタートアップを評価する「LVMH Innovation Award 2024」で日本企業として初のファイナリストに選出され、「Employee Experience, Diversity & Inclusion」カテゴリ賞を受賞しました。初の海外拠点としてフランス・パリに現地法人も設立した今、何を目指すのですか。

 目標は大きく2つあります。創業時からメゾンブランドのような存在を目指しているとお話しましたが、実はその先に目標のひとつにしているのは「ハローキティ」です。キティちゃんは、ラグジュアリーブランドともコラボする一方、100円ショップでもキャラクター商品が並んでいますが、それでブランド価値が損なわれることはありません。ヘラルボニーも将来的には、人々のライフスタイルに浸透するブランドになり、誰もが作家のアートに親しめる環境をつくりたいと思っています。

 けれど、今はまだ、その高みには達していません。今後、創業地である岩手をはじめとして国内外に店舗を構え、オンラインだけでなくリアルでの強みを出していきたいです。そして世界的な美術館に提案を強めます。パリに拠点を構えたのは、メゾンブランドの集積地だからです。ここで評価されなければ世界での評価はあり得ません。障害のある方の描くアートは一般的にアール・ブリュットやアウトサイダー・アートとして認知されていますが、ビジネスとして成功した例は世界を見渡してもなかなかありません。パリの拠点創設は、キティちゃんのような不動のブランドを目指すための一歩なのです。

 2つ目の目標は業績アップです。私たちは上場を目指しています。その鐘を作家と一緒に鳴らしたいのです。現在の社会経済は健常者を前提としていますが、ヘラルボニーは障害のある作家の皆さんのクリエイティビティーがなければビジネスが成り立ちません。彼らの才能と実力が私たちの株価を上げ、社会を豊かにしてくれる。上場の鐘は社会に対するメッセージになるでしょう。そのことを経済性で証明するためにも、今私たちは業績を上げたいです。幸いなことに売上目標は達成(※)し続けており、投資家には自信を持って報告できています。

※BtoB事業は前年度比200%成長、BtoC事業は前年度比150%成長(2023年度時点)、売上の構成比率はBtoB事業が約6割、BtoC事業が約4割


 加えて、ヘラルボニーは東京でなく、岩手が創業の地であることもユニークな価値だと思っています。自治体と協定を結んでいて、ホテルやギャラリーなどさまざまな場所にヘラルボニーのアートが使われています。この先、障害へのイメージを変える「聖地」として岩手を盛り上げる存在になりたいです。

―― 岩手発祥の「異彩」のブランドが障害福祉と両立しながら、世界的なブランドへと成長できるか注目したいです。本日はありがとうございました。
  
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