CATCH THE RISING STAR #27
注目ベンチャーからJリーグへ転職、若手部長が追求する緻密プロモーション【西功暉氏】
企業におけるマーケティングの重要性が増す一方、「マーケターの仕事はAIに奪われるのでは」とも囁かれる昨今。そんな変革期に、マーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
Agenda noteでは一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。幼少期からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第27回は特別編。Jリーグで入社4年目ながらクラブサポート部部長に昇格した西功暉氏は、実は前職ラクスルでマーケティングやノバセルのグロースに携わった経歴の持ち主。愛するJリーグの成長に貢献したいと転職し、徹底的な顧客分析と緻密なプロモーションで集客と認知アップに貢献する西氏は、自身の経験をどう生かしているのか。その手腕に迫る。
Agenda noteでは一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。幼少期からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第27回は特別編。Jリーグで入社4年目ながらクラブサポート部部長に昇格した西功暉氏は、実は前職ラクスルでマーケティングやノバセルのグロースに携わった経歴の持ち主。愛するJリーグの成長に貢献したいと転職し、徹底的な顧客分析と緻密なプロモーションで集客と認知アップに貢献する西氏は、自身の経験をどう生かしているのか。その手腕に迫る。
セグメント別の緻密コミュニケーションで集客アップ
―― Jリーグへの入社の経緯を教えてください。
新卒で広告会社のセプテーニに入社し、その後2016年にITスタートアップのラクスルを経て、2021年にJリーグに入りました。
私は新卒から一貫してマーケティングの仕事に携わってきたのですが、その中で漠然と、自分の今までの経験を、自分のすごく好きだと思うものを広めるために生かせたら楽しそうだと考えるようになりました。
ラクスルでは「ノバセル」という新サービスの拡大を担っており、営業から事業開発まで沢山のことを経験させてもらいました。その一方で、ラクスルには、経営者であり最強のマーケターでもある田部(正樹)さんがおり、彼のいない環境でチャレンジすることで、自分の力を試したいという思いもありました。
そんな時にSNSでJリーグのマーケター募集の広告を見て、勢いで応募してみたところ、運よく内定をいただきました。まさか内定をいただけると思っておらず、当時ラクスル(ノバセル)で開発を担当していたプロダクトもあったので迷いましたが、こんな機会はなかなかない、これも何かの縁だと思って入社を決意しました。
西 功暉 氏
Jリーグ クラブサポート2部 部長 (兼) 事業マーケティング本部プロモーション部 プロモーション担当オフィサー
(取材時はクラブサポート部 クラブ事業・メディアサポートオフィサー、(兼)以下同上)
Jリーグ クラブサポート2部 部長 (兼) 事業マーケティング本部プロモーション部 プロモーション担当オフィサー
(取材時はクラブサポート部 クラブ事業・メディアサポートオフィサー、(兼)以下同上)
―― Jリーグへの思い入れは、もともと強かったのですか。
強かったです。私は大分出身なのですが、大分はサッカー熱が比較的高い地域で、私自身もサッカーをして育ったので、サッカーのある日常が当たり前でした。社会人になってからはひとりのJリーグファンとして、全国のいろいろなスタジアムに観戦に行っていました。
―― 入社してからはどのような業務を担当してきましたか。
Jリーグ全体のマーケティング・プロモーションや、各クラブのマーケティング・集客をお手伝いする仕事を担当しています。
たとえば、「まだJリーグに興味が無い方」には興味を持っていただくためのタッチポイントづくりや関心向上施策、「興味はあるけど観戦したことが無い方」にはスタジアムに足を運んでいただくためのきっかけづくり、スタジアムに観戦に来た方には再来訪促進・エンゲージメント向上施策を、それぞれのセグメントごとに企画・実施しています。
ターゲットによってコミュニケーション戦略や届けられるチャネルも異なる中で、 「Jリーグに興味が無い方」にSNSで情報を届けることはなかなか難しいため、受動的にJリーグに接触する機会を増やすために、テレビを中心としたマスメディアでの露出強化や、新規層に比較的リーチしやすいTikTokの活用などに会社全体で注力しています。
また、「興味はあるけど観戦したことが無い方」へのスタジアム来場を後押しする施策として、ゴールデンウィークや夏に全クラブ共同で大規模な招待キャンペーンを実施したり、「THE国立DAY」と呼ぶ国立競技場でのリーグ戦のプロモーションや、各地で各クラブの「集客注力試合」の支援をしたりしています。
既存ファン・サポーター向けにはSNSが有効なため、共感や、楽しんでいただけることを重視したコンテンツづくりを意識しています。
こうした業務に加えて、2年前に野々村芳和チェアマンが新設したクラブサポート本部の仕事も行っています。クラブサポート部では、各クラブにJリーグの担当者が付き、現地に通いながら、クラブと二人三脚で集客数増加に向けた施策や、地元メディアでのクラブの露出増加に取り組んでいます。
私は出身地でもある大分トリニータを担当し、クラブのチケッティング部門と集客施策を考えたり、広報とメディア露出の働きかけを行ったりしています。
―― プロモーションにおいて、具体的にはどのような目標設定をしているのですか。
事業マーケティング本部では総入場者数やJリーグ関心度、そこに紐づくJリーグID数やMAU、メディア露出量などをKPIとして設置しています。顧客構造を把握するための定量調査を年に数回実施し、顧客を未認知層・認知未観戦層・離反層・ライト層・コア層など計9つのセグメントに分類して、各セグメントの推移を見ています。
これらの調査によると、「Jリーグは知っているけれどスタジアム観戦に行ったことはない」という認知未観戦層は、未だ人口の6割以上を占めている状況です。そういった方がJリーグに興味を持ち、スタジアム観戦してみたいと思うためには何を伝えていくべきかを突き詰める必要があります。
「初めてスタジアム観戦したきっかけや理由」「Jリーグに抱くイメージ」はある程度、ネット調査で分析することができますが、心の奥底にある本質的な感情はネット調査では見えづらいため、より現場で顧客解像度を高めることが重要だと感じています。