TOP PLAYER INTERVIEW #84
3度目の日本上陸で売上好調の「スキットルズ」、エッジの効いたコミュニケーション戦略の背景
過去2回はマーケティングをほとんどせず終売へ
―― 日本では3度目の発売ですが、過去2回はなぜ終売となってしまったのでしょうか。
1度目は1995年にテスト発売として一部の店舗やチェーン店だけで発売しました。結果次第では、全国展開しようというのが当初の目論見でしたが、売上がなかなかついてこず、テストだけで終売してしまいました。
2度目は約15年後の2010年前後です。輸入食品や輸入菓子を扱っている全国店舗をメインに販売しましたが、そのタイミングでも期待していたほどの売上があがらず、販売が継続できませんでした。
どちらも大きな原因のひとつは、スキットルズという商品に対してマーケティングのサポートがほとんどなかったことだと考えています。当時は、お菓子事業全般の戦略として当社を代表するブランドのスニッカーズやM&M'Sといったチョコレートカテゴリを伸ばしていくことに注力していて、スキットルズは投資も含めて大きなサポートをする対象ではありませんでした。
また、「グローバルでトップクラスのキャンディ」と打ち出せば、日本の消費者にもある程度は受け入れていただけるのではないかという思惑もありました。しかし、認知のない商品を初めて見て、手に取るということはなかなか難しかったと感じています。正直、店頭でパッケージを見ても、それがどのような食べ物なのか、何味なのかもパッと見ではわからないので、そこをマーケティング活動でしっかりと埋める必要があったと思います。
さらに、当時の日本市場ではスキットルズがターゲットとしている20代の消費者にとって、グミやソフトキャンディのカテゴリが今ほどメジャーではなかったことも、終売の要因としてあったと思います。特に、その当時はグミやソフトキャンディは子どもが食べるものだと思われていたので、20代が食べるお菓子ではないと思ってなかなか手が出なかったのだと思いますね。
日本市場の状況が変わり、3度目の発売へ
―― 今回、再び日本での発売に至った背景を教えてください。
まず、以前と比べて日本でグミやソフトキャンディのカテゴリが大きく伸びているという市場の変化があります。特に伸長したのはコロナ禍以降で、マスクをするようになってオーラルケアの需要が下がったため、それまでガムを噛んでいた人が、噛むことによるストレス解消や甘味を求めてグミやキャンディを食べるようになりました。世代としても、かつてよくグミを食べていた子どもではなく、スキットルズがターゲットにしている20~30代がメインになるという大きな変化がありました。
また、日本ではもともと「少しずつ食べる」という需要が強く、最近では仕事や作業をしながら気軽に楽しむシーンがより具体的にイメージされるようになりました。このような背景から、いろいろな企業がグミやキャンディの新商品を次々と発売し、市場の活性化が進んでいます。さらに、店舗でこれらの商品を目にする機会が増えたことで、より一層お客さまに手に取っていただけるカテゴリへと成長してきていると感じます。
加えて、2024年はスキットルズが50周年を迎えた節目のタイミングでした。当社のグローバル戦略として、チョコレート以外のカテゴリーでもブランドを強化し、お客さまの手に届けられる商品を増やすことで、どのようなシーンでも我々のお菓子を食べていただけるようにしたいという方向で舵を切りました。
ブランドとしても、当社としても絶好のタイミングであり、市場も好調で、消費者に受け入れられる素地が整っていることを踏まえて、今回の販売に踏み切ったという背景があります。