創造的思考の源泉とマーケティング #06

日清食品の宣伝部長が明かす、おもしろいテレビCMをつくり続けるための「脳のスイッチ」【日清食品ホールディングス 宣伝部長 米山慎一郎氏】

 

「おもしろい」と感じた仕事にチャレンジできる宣伝部の組織体制


萩原 宣伝部の体制はどうなっているのですか。

米山 当社の経営陣は広告を非常に重視していて、たとえ経営環境が厳しくても広告宣伝費を削らず、きちんと広告をやろうと考えるほどです。また、当社の原点であるチキンラーメンはテレビ文化とともに育ってきましたし、マス向けの商品なので、マスにリーチできるメディアの広告は、マーケティングの重要な要素の1つだと考えています。それゆえに、広告制作には一切妥協しないんです。

会社のトップが広告を自分ゴトにしているので、社長(日清食品 代表取締役社長 安藤徳隆氏)との定例ミーティングを1週間に1回必ず設けています。そこで、これはおもしろくないね、これは良いんじゃないかと議論して決めています。
  

その定例ミーティングではCMなどの広告だけでなく、Xの投稿案も一緒に話し合っており、社長が「ここの言葉にカギカッコを付けたほうがいいんじゃないの?」といった細部についての意見も出ます。

萩原 素晴らしいですね。安藤社長がクリエイティブディレクターでもあるのですね。

米山 おっしゃるとおりです。私たちの会社のECD(エグゼクティブクリエイティブディレクター)だと思っています。

宣伝部のスタッフは私を含めて26人です。テレビやインターネットのバイイングも宣伝部ですべて行っているので、メディアバイイングの仕事をしているメンバーも3~4人含まれています。

CD(クリエイティブディレクター)は6人。それぞれが担当ブランドを持ち、そのブランドのコミュニケーション全般の責任を負っています。以前はCDの下にチームを置いていたのですが、コロナ禍によってチームごとの仕事に偏りが生じ、メンバーの成長スピードに差が出るようになってきました。そこで、CD以外のメンバーは自分がやりたい、おもしろいと感じた仕事やプロジェクトに自ら手を挙げてやりなさいというルールに変えました。CDがその都度募集して、それをメンバーが選ぶ仕組みです。

萩原 それは面白いですね。コロナ以降にそういう体制にしたんですね。

米山 そうです。「次のクールのSNSの公式アカウントの投稿案を考えるのにスタッフ3人欲しいが、誰かやりたい人はいますか?」という形でCDが呼びかけるんです。

SNS投稿のコンテンツ作りは、できるだけ短いコピーで、なんならコピーもなく、写真だけで明確で印象的なメッセージを伝えるという非常に洗練された仕事だと思っています。そのため、若手の登竜門という位置づけで、宣伝部に入ったばかりのスタッフが積極的に手を挙げてくれています。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録