創造的思考の源泉とマーケティング #07

「オール良し」は受け入れられない。日清食品のカオスなテレビCMに隠された論理とおもしろさ【日清食品ホールディングス 宣伝部長 米山慎一郎氏】

 

伝説のカップヌードル「NO BORDER」が復活!?


萩原 あと2つのトピックを話したいです。ひとつは、2004年より展開していた「カップヌードル」のテレビCM「NO BORDER」シリーズです。いまだに、あのときのコミュニケーションがすごく好きだという声をよく聞きます。あのようなコミュニケーションに立ちかえることは考えたりしますか。

米山 その当時、私はマーケティング部に在籍していて、「カップヌードル」を担当していました。そこから宣伝部に移って、実はこの12年間で2回ほど昔のスタイルに戻ることにチャレンジしました。でも、「これでは今の人の心を掴まない」と企画の時点で気づくんですよ。
  

萩原 それはどのような理由なんでしょうか。

米山 「オール良し」なんですよ。基本的に、今の世の中に「オール良し」なんてもう成立しないんだろうなと思っています。

萩原 みんなが「オール良し」と思うものを、つくろうとする時点で間違いなんですね。

米山 はい。それは挑戦してみて思いましたが、企画のタイミングで「うわ、これはちょっとダメだな」と感じました。結局、それは世には出ていません。

ただ、マーケティングは比較的同じところをぐるぐると回っていると感じています。たとえば、「チキンラーメン」は60年以上も広告していますが、「卵を乗せたら美味しい」「スープの唯一無二の美味しさ」「外で食べると美味しい」「料理としてアレンジしやすい」「いや、卵を乗せるだけが美味しい」と、同じところをぐるぐると回っている感じなんです。

一昔前は、気の利いたコピーが多かったと思いますが、最近はシンプルでダイレクトなコピーが求められていると思います。ただ、15年後には再び気の利いたコピーが、すごい盛んになっている気がするんですよね。

萩原 時代が回ってくる可能性があるんですね。
  

米山 だから、そのときに「オール良し」の広告が、もしかしたら復活するかもしれません。実は、社長も「最近のCMには飽きてきてるんだよね。たとえば『ただ美味しい』という広告はどう?」と、チラッと言っているんですよ。

萩原 すごいですね!

米山 社長は「かっこいいテレビCMは、いつでもつくれる。でもそれでは商品が売れない」と言っていますね。

萩原 さすがですね。非常に納得しました。

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