創造的思考の源泉とマーケティング #07

「オール良し」は受け入れられない。日清食品のカオスなテレビCMに隠された論理とおもしろさ【日清食品ホールディングス 宣伝部長 米山慎一郎氏】

 

テレビCMの良さを最大限に引き出す


萩原 もうひとつ聞きたかったことは、テレビCMの最後のVI(ビジュアル・アイデンティティ)規程に関して、入れるときと入れないときがあると思うのですが、判断がどうなっているのか気になります。

米山 私が一番聞かれたくないところを萩原さんは突いてきますね(笑)。当社はCI(コーポレート・アイデンティティ)/VI規程を細かく管理しています。たとえば、ロゴのアイソレーション(周囲に余白を取ること)や表示のタイミングも冒頭と最後と何秒間は表示しなさいなどは、厳密に決めているんです。

ただ、ルールだけで縛るとクリエイティブの自由度が失われてしまうため、「マーケティング上、必要な場合はこの限りではない。事前に宣伝部に相談すること」という一文を加えました。これで調整がしやすくなりましたね。

萩原 なるほど、規程はあるものの調整はできるんですね。

米山 もちろん企業としては、ブランディングを統一していく必要があると思っています。でも、それ以上にそのテレビCMの良さや商品の売れる方向性、クリエイティブの良さを最大限に引き出すことを重視するという明確な基準は設けています。

萩原 理解しました。リクルートのテレビCMは最後に企業VIが1.5秒入ります。

米山 私の肌感覚ですが、リクルートさんは事業やサービスが本当に多岐にわたっているので、「これもリクルートなんだ」というのは、すごい刷り込まれていると思いますよ。クリエイティブ上の制約はありますが、メリットは十分出ていると思います。

萩原 そうですね。ただ、そこに対して何かいい解決方法がないかをずっと考えていて、もう少し自由度を上げたいと思っていました。

米山 極端な話、20秒や35秒のCM枠があればいいですね(笑)。YouTubeの場合は何秒でもいいわけですから。

萩原 YouTube用につくったCMをテレビで流したいぐらいですね(笑)。本日は、貴重なお話ありがとうございました。
  
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