マーケティング・ビジネス課題を解決する学術研究 #03
ChatGPTやGeminiなどの生成AIで人間の創造性は本当に高まるのか? マーケターが壁打ち相手として意識すべきポイントを解説
マーケティングやビジネスの最新情報を得るには、実証された知見が多く詰まっている研究者の学術研究にも目を向けることが重要になる。早稲田大学ビジネススクールの客員教授である及川直彦氏による連載「マーケティング・ビジネス課題を解決する学術研究」では、マーケティングや営業、新規事業開発に携わるビジネスパーソンが直面する課題に対し、学術的な視点から解決策を提供していく。
第3回は、生成AIの進化がマーケティング業界でも注目を集めている状況を考える。生成AIはメールや文章作成、企画書のアイデア出しなど、マーケターにとって欠かせない存在となりつつある。今回は、ChatGPTなどの生成AIチャットをビジネスシーンで活用するときに、「壁打ち」相手として、本当に人間の創造性を高める効果があるのかについて、認知科学の研究をもとに紹介する。さらに、最後にはマーケターが生成AIチャットを活用するときに意識すべきポイントについても解説する。
第3回は、生成AIの進化がマーケティング業界でも注目を集めている状況を考える。生成AIはメールや文章作成、企画書のアイデア出しなど、マーケターにとって欠かせない存在となりつつある。今回は、ChatGPTなどの生成AIチャットをビジネスシーンで活用するときに、「壁打ち」相手として、本当に人間の創造性を高める効果があるのかについて、認知科学の研究をもとに紹介する。さらに、最後にはマーケターが生成AIチャットを活用するときに意識すべきポイントについても解説する。
生成AIは、人間の創造性を本当に高めるか
生成AIをビジネスで活用する中で、文書の要約や作成、情報収集、翻訳とともによく挙げられるのが、アイデア創出への活用です。最近、ChatGPTやGeminiなどの生成AIを実装したチャット(以下、生成AIチャット)を「壁打ち」の相手にし、一緒にブレストをしている人々が私の周りで多くなっていますし、私自身もそのような使い方をすることがあります。
一方で、生成AIが出力するテキストは意外性や驚きのない一般論的なものであり、それゆえ出力されたテキストは創造的なアイデアを生み出すことにつながらないのではないか、という懐疑的な意見も耳にします。
生成AIチャットを「壁打ち」の相手に使うと、人間の創造性は本当に高まるのでしょうか。もし創造性が高まるとしたら、どんな「壁打ち」の仕方をすると良いのでしょうか。
たとえば、生成AIチャットには基本的な情報を下調べしてもらい、それを見ながら人間が発想を広げるのが良いのでしょうか。それとも、人間が自分の知っている基本的な情報を生成AIチャットに説明して、それに基づいて生成AIチャットに発想を広げてもらうのが良いのでしょうか。あるいは、そんな役割分担はあまり関係がなく、生成AIチャットを自分ではない「他者」と認識し、話し相手になってもらうこと自体が人間の創造性を高めるのでしょうか。