アクセンチュア・ライフ・トレンドにみるマーケティングの指針
アクセンチュアがライフトレンド2025を発表、キーワードは「Pause&Rebalance」信頼を重視した新CRMを提言
コンサル大手のアクセンチュアは2月27日、国際的な生活者トレンドを分析した年次レポート「アクセンチュア ライフトレンド 2025」を発表し、デジタル体験の破壊的な進歩の中、新技術に対する人々の向き合い方が「立ち止まり(Pause)、リバランス(Rebalance)」を起こしていると指摘した。オンライン上の情報やコンテンツが信頼できるかを厳しく見極める行動変容が起こっており、信頼と共感に基づく次世代の顧客関係管理「CRM2.0」が必要だと提案した。
「ためらい」と「せっかち」
レポートが示した最新トレンドは以下の5つ。これらを踏まえ、今後1年間は「信頼」が企業と顧客の関係性を再構築すると予測した。
1) 「ためらいのしわ寄せ」
オンライン上で真偽の見極めが難しくなり、オンラインの情報に対して反射的に「ためらい」が生じている。企業が人々にためらいなく選ばれるためには、コンテンツを安心して利用できる環境づくりと信頼の再構築が重要。AIの利用やデータ収集に対しては何らかの形でルールが生まれる可能性が高い。
2) 「親子間ギャップ」
子どもがデジタル技術と健全な関係を保てるよう、行政や学校、親などの取り組みが加速していることは、企業のターゲティングにも影響を及ぼす。若年層にリーチする際は、何が文化的に最適であるかを理解し、デジタルに依存しない戦略やサービスの設計が必要になる。
3) 「せっかちエコノミー」
幸福を手にいれるためにかかる時間が歯がゆいものになり、多くの人は効率的・迅速な解決法を得るために、ソーシャルメディアから共感しやすい経験やアドバイスを容易に見つけるようになった。同じような経験を持つ人の話は受け入れられやすいという傾向は、顧客との強いつながりを求めるブランドにヒントを与える。
4)「仕事の尊厳」
従業員にとって仕事が事務的で距離感のあるものになり、リーダーは従業員よりも効率性や生産性を重視していると感じられがちだ。従業員が自らモチベーションを上げられるような従業員体験が、優れた顧客体験や企業の成功にもつながる。企業はAIを擬人化せず、人が人として尊厳を保ちながら働ける環境を設計すべきである。
5)「つながりの再野生化」
デジタル中心の生活を送ってきた人々は、デジタルと現実のバランスを考え直し、現実世界の意義ある活動や交流を取り戻したいと願っている。ここに企業と顧客の新たな接点創出のビジネスチャンスがあり、デジタルとリアルをリバランスした手触り感のある体験やコミュニケーションが求められている。
希薄化した顧客との関係性を強化
今回のレポート・提言のキーワードは「Pause&Rebalance」、そして「信頼」。ここから日本企業が見出せるヒントについて、アクセンチュアソングのマネジング・ディレクター の吉井雄太郎氏は「選ばれ続けるためには、変化する生活者の価値観を的確に理解し、関係構築の強化を愚直に続けることが重要」と指摘し、その具体的な手法として「CRM2.0」を提言した。
吉井氏によると、現代の「CRM1.0」は効率性と規模の最大化を追求した結果、組織のサイロ化や、多様化する顧客との関係性の希薄化を招いている。進化した「CRM2.0」は「人とテクノロジーとが融合し、企業活動を根本から革新する生活者との関係構築のパラダイムシフト」と定義。
たとえば生成AIとバディを組み、高度に多能化された人材がクロスファンクショナルに活躍できる組織体制や、深く多次元なデータに基づく顧客理解によって、動的かつタイムリーなパーソナライゼーションを実現する未来を指す。さらに従来の効率性に加えて、人間的な信頼・共感を伴う双方向的なコミュニケーションによって顧客との関係性を強化することで、顧客体験価値(cLTV)とLTV(企業の収益)を精度高く両立できる施策の高速PDCAの確立が重要になると指摘した。

レポートは今回で18回目。アクセンチュアソングに属する各国のデザイナーやクリエイター、技術者、社会学者、人類学者の知見や、世界22カ国の消費者調査データに基づき作成された。