広報・PR #22

大谷翔平選手はなぜ企業から選ばれるのか? 広告起用の成功要因を多角的に分析

 

広告効果の多面的測定とリアルタイム施策


 広告効果の測定は、もはやテレビ視聴率や売上だけでは不十分である。現代ではSNSでの拡散数、ブランド好感度、検索数、ECサイトでの購買率など、さまざまな視点からの測定が必要とされる。

 大谷選手のようにSNSトラフィックへの影響が大きいタレントを起用するときには、放映時期に連動したオンラインキャンペーンを展開し、PDCAサイクルをリアルタイムで回すことが効果的である。テレビCM、デジタル、オフライン広告を統合的に設計し、実行することで、短期的なインパクトと検証精度の両立が実現可能である。
 

代替シナリオ設計と緊急対応体制


 野球という競技の性質上、移籍、起用法の変更、チーム成績など、外的要因が広告露出に大きく影響を及ぼす。たとえば、シーズン中に長期離脱となった場合、広告計画そのものが停滞するリスクがある。

 このような事態に備え、私は実務において選手起用時に、次の3つのシナリオを事前に策定した経験がある。

 1. Maxの場合
 2. Minimumの場合
 3. Most Likelyの場合

 たとえば、あるプロ野球選手を起用したキャンペーンでは、次のシナリオを立てた。

 1. 本塁打王などの好成績時には、追加施策と店頭展開の強化
 2. 故障による出場減少時には、代替タレントによる素材差し替えを即時に実行
 3. 平均的成績時には、予定通りの展開とSNS施策を進行する

 このように、どの局面にも対応可能な体制を整えていた(守秘義務の関係で内容は再構成している)。その結果、選手が予想を超える活躍をしたときにも速やかに施策を展開でき、広告効果を最大化することができた。
 

終わりに


 広告主は常に、予測不能な状況に備えた代替シナリオを持つべきである。特に、大谷選手のように国際的な注目度が高く、情報の流通スピードが速い現代においては、その重要性が一層高いだろう。

 実務的には、「15日以上の故障欠場時の契約見直し条項」や「不祥事発生時の広告素材使用停止条項」など、具体的な契約条項を明確にし、緊急対応のフローを文書化しておくことが望ましい。さらに、企業、広告会社、タレント事務所の3者間での情報共有体制を事前に整備しておくことで、危機時の迅速な判断と対応が可能となる。

 私自身、週次で選手の動向レポートを関係者間で共有し、必要に応じて24時間以内に意思決定が可能な体制を構築したことがある。このような仕組みが、リスク管理と広告成果の最大化を両立させる鍵であると確信している。
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