パナソニック コネクトから学ぶ「B2Bマーケティングの本質と成果を上げるための実践」 #02
多様化するB2Bマーケティング、なぜ安易なフレームワーク適用は“ミスマッチ”を生むのか?【パナソニック コネクト 関口昭如氏】
2025/05/08
2. 顧客カバレッジによる違い
顧客カバレッジとは、企業が顧客との関係をどのように構築し、管理するかを示すモデルです。たとえば今回は「One to One」「One to Some」「One to Many」に分けるとわかりやすいでしょう。
「One to One」モデルでは、大口顧客や戦略顧客1社の顧客と深く長期的な関係を築くことを目指し、アカウントセールス部門と連携し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指します。企業内におけるホワイトスペースなども狙い、ABM(アカウントベースドマーケティング)が主となります。そこではカスタマーサクセスやロイヤリティプログラムなども論点です。また1社向けのソリューションという意味で、価値づくりの方法もほかの分類とは異なります(より深い共創、カスタマイズが多くなるなど)。
「One to Some」モデルでは、類似したニーズや特性を持つ顧客セグメントをターゲットとします。個別対応と効率性のバランスを取ることも重要です。業界特化型の価値づくりや訴求、コミュニティマーケティングなど顧客同士が会話をするコミュニティをつくることなども考える必要があります。また、価値づくりにおいても、「One to One」とも異なります。どこまでカスタマイズするのか、どこまで共通化するのか予めアーキテクチャという概念を考えて価値づくりを考えることが大変重要になります。
「One to Many」モデルでは、大多数の顧客を対象とし、標準化された価値づくり、コミュニケーションを展開します。そのため、対象セグメント、場合によってはマス向けメディアへの施策やデジタルメディアの活用など、効率的なリーチも重要になります。
3. マーケティング業務の多様性
ところで、 2023年に行われたBtoBマーケティングのカンファレンス「B2Bアジェンダ2023」で、参加者の一部にアンケートを取りました。
その結果、コーポレート全体のブランディングや広報活動から、事業ブランドのプロダクトマーケティング、セールスマーケティング、CRMなどを使ったリレーショナルマーケティングなど、多種多様な参加者がいることがわかりました。

また、具体的に取り組んでいることは、顧客やマーケット、ステークホルダーを理解する活動、価値づくりの活動、価値の伝達によりセールス連携する活動、価値が本当に生まれているかを見極め、改善活動を行うことなどに分かれていそうです。同じカンファレンスであっても、参加者の目線・目的意識の多様化が推察されます。このNoteを読まれている読者の皆さんが取り組んでいる業務が、自分の業務は全体のどこの役割を担っているのか、そしてどの部分を連携や強化していくべきなのか、改めて全体から見つめ直すべきだと思います。
今回は、B2Bマーケティングの多様性と、安易なフレームワーク適用がもたらすミスマッチについて考察しました。B2Bマーケティングは、IT、医薬、原材料、流通まで、実に多様な産業領域を包含します。さらに、それぞれの産業特性や顧客カバレッジモデル、マーケティング担当者の役割によって、フレームワークなども異なります。
先述の通りSaaSソリューション向けのフレームワークが、原材料メーカーの研究開発部門にはそのまま適用できないように、顧客の購買プロセスや顧客価値の源泉、そしてマーケティング活動の目的を深く理解することが不可欠です。
B2Bマーケターは、自社の商材やサービス、ターゲット顧客、顧客との関係構築モデル、さらには自身の業務範囲を改めて見つめ直し、既存のフレームワークをそのまま鵜呑みにするのではなく、自社の状況に応じた取捨選択と最適化を進めていく必要があります。 B2Bマーケティングでは、その多様性を理解と自分の業務の位置づけを正しく理解することは、真価を発揮する条件の一つです。
なお、最後に強調しておきたいことは、既存のフレームワークが悪いといっているのではありません。そこはあくまでも先人の具体案件を抽象化し、モデル化し、将来の具現化のために冷凍保存してくれた有難いものです。これらを自社の状況や自分の業務に照らし合わせて、具現化していくこと、正しいフレームワークを探索し、前例が本当になければ自分で作る。これこそが、B2Bマーケターの腕の見せ所とも言えるでしょう。
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