よなよな流「ファンベース・ブランディング」―ファンの熱狂をブランドの力に変える方法 #08

「よなよなエールのブランドは、マニュアルではつくれない」ヤッホーブルーイング井手社長

経営者が躊躇するほどのイノベーション人材が必要だ

稲垣 僕の持論ですが、経営者は会社の「コア」であると同時に、「辺境」でもあると思うんです。前後の文脈は関係なく、唐突に面白いネタを持ってくることも、経営者の役割のひとつと言えるのではないかと。会社が大きくなってきて、各メンバーが自らのタスクを背負って忙しく働いている中、てんちょは“自由人”だと思うし、そういう才能や人脈があるので、「最近、こういう面白いネタがあるよ」とか、「こういうことをやってみるといいのでは?」といったことを、現場にどんどん投げかけてもらいたいと思っています。

 すべてが、「よなよなエールの超宴」や「よなよなビアワークス」のように芽が出るとは限りませんが、てんちょから言われたことをきっかけに現場が取り組むようになり、のちのち花開くものが出てくるかもしれないなと思っています。当社のスタッフは真面目に取り組む人が多く、てんちょのように、ある種“羽目を外した”生き方をしている人は少ない。これまでの延長線上にないことを発想し、実行するきっかけを与えてもらえればなと。

井手 全社員は難しいかもしれないけれど、もっと色んな人から、常識をはみ出したイノベーティブなアイデアを出してもらいたいと思っているよ。そのためには、ビール業界だけに閉じず、さまざまな経験・活動をする必要がある。僕はビール業界に所属してはいるけれど、ビール業界よりもIT業界やスタートアップといった異業種の人と積極的に交流をもっていて、そこから学ぶことが非常に多い。

 ごろうも、最近、ビール業界以外の場で注目されるようになってきていると思う。全員が全員、そうする必要はないけれど、少なくとも他部門のユニットディレクターも、いろんな業種に飛び込んでいってイノベーションの種を見つけ、実現してみたいことがあればどんどん挑戦してもらって構わない。そうなれば、ヤッホーブルーイングはもっと強い会社になっていくだろうと期待しています。僕のほうが、「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!」と戸惑ってしまうような、新しいアイデアが出てくることを期待したい。



 最近は採用でも、優秀だけれど“ちょっと変な人”、通常の採用活動では、選考過程でこぼれてしまうような人を積極的に採ろうと思っているんだよね。特に、ファンマーケティングやブランディング、プロモーションに向いていそうな人。

 従来は、最終面接まで進んだ人にのみ、「新製品を3つ提案する」「3年後に売上が3倍になるようなマーケティング施策を考える」といった課題に取り組んでもらっていたけれど、書類審査を通った人全員に取り組んでもらうことにした。そうすることで、本当に志望度が高く、かつユニークな発想を持つ人と出会えるんだよね。もちろん「リスクが高い」と反対するリーダーも少なからずいて、この前激しい議論にもなったのだけれど。

稲垣 僕と同じタイミングで入社した人を見渡してみると、変人が多い(笑)。「巨匠」と呼ばれる”みんも”(編集部注:よなよなエールプロダクション部間坂氏)なんて、基本的にぶっとんだアイデアしか出しませんからね。例えば、「僕ビール、君ビール。」のプロモーション企画「全国カエル捕獲大作戦」は大反響でした。
 

井手 色んなことをそつなくこなす人材ももちろん貴重なんだけれど、それだけではイノベーションは起こせない。ジェネラリストではないけれど、特定の領域でなら世界一になれるような人を、もっと採用していきたいね。
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