マーケティングアジェンダ特別企画

AI活用の爆速進化にクラクラ。ーマーケティングアジェンダ沖縄2025参加レポート【前編】

セッションから筆者が得た、3つの気づき

 こうした内容に関して、筆者が感じたことや考えたことを3つ列挙してみます。

 ①人として苦労して正解にたどり着いた経験がない人(これからの業界参入者)に、果たしてAI活用における「判断」ができるのか?
 現状、しっかりと「判断」することでAIを使いこなせている人々は、10年とか20年とか、人として苦労してその専門知を手に入れています。AIが解答を多数用意する時代にこの仕事を始めるこれからの人たちにも、果たしてそれが可能なのでしょうか? 新しいタイプの「マーケター育成」が必須になるでしょう。

②ともするとAIを主語にしがちだが、AIに主体性はないはず。我々はAI活用を語る時も、常に「我々」を主語として設定すべきでは。
 その意味で、「AIは市場を創造するのか?」という問いに対する自分の回答は、この文章がAIを主語としているのであれば、明確に「否」となります。筆者の考えからすると、この問いは「我々は、AIを活用することで、市場創造ができるのか?」と、「我々」を主語にすべきです。

③議論が「成果」にフォーカスし過ぎではないか? 成果はもちろん重要だが、その仕事に携わるマーケターにとっての「働く喜び」や「働く意欲」についても、今後議論が必要では?
 筆者は、広い意味でのマーケティングの一角である広告クリエイティブに長く関わってきて、今もそれを研究したり教えたり記事に書いたりしているのですが、その時の働く喜びの中核となるものは「着想する喜び」です。

 課題に対しての解決策を、さまざまに分析し議論し考察しながら着想することが、自分がそこに存在していることの意味だと感じるからです。AI活用との向き合い方を間違えると、それは逆に“働く人のマシーン化”も招きかねないと感じました。


ラウンドテーブルディスカッションでも、AIにやらせるべき仕事と、自分(人間)がやるべき仕事について活発な議論が行われた。


3日間の内容を総括するラップアップセッションでも、AI時代に人間・ビジネスパーソン・マーケターが磨くべきスキルとは何かが議論された。

 今回の目玉の講演の一つであった、足立光氏による「ファミマ躍進を生んだ3つの仕掛け」の中で、氏は「AI活用は、急速にコモディティ化する。それは対応せざるを得ないものではあるが、AI活用によって競争優位を得ることはできない」という趣旨の発言をしていました(筆者にそう聞こえただけなので、正確な発言内容ではなく、文責は佐藤達郎)。

 筆者も、賛成です。爆速で進化するAIは、活用せざるを得ないし、上手に活用すべきだけれど、それは企業の競争力の中核にはなり得ないというのが、現時点での筆者の結論です。


3日目のキーノートに登壇した足立光氏。AIでは再現できない、「人を動かし、人が動く技術」について語られた。

 マーケティングアジェンダのさらにもう1つの特徴は、凄まじい勢いでの“交流”です。各種セッションの間の「ネットワーキングタイム」でも、会場の至るところで名刺と情報と意見の交換がなされていました。

 それは言ってみれば、350枚の名刺交換であり、350人とのネットワーキングです。この、「人とのネットワーキング」こそ、AIにはできず、人がやるべき最も大切なことだなぁ。本当に、そう思います。


3日目、すべての講演プログラムが終了した後に行われるレクリエーションの1シーン。
 
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