イノベーション×コミュニケーション #01
広告コミュニケーションは、やはり恋愛に例えると分かりやすい
コダック、日本コカ・コーラ、西友などでマーケティング業務を歴任し、現在は、ドミノ・ピザ ジャパン 執行役員 CMOとして活躍する富永朋信氏。
日本コカ・コーラでiモードでコカ・コーラが買える自販機システム「Cmode」の立ち上げ、西友では価格を軸にしたコミュニケーション「KY(カカクヤスク)」やプライベートブランド「みなさまのお墨付き」などで同社のイメージを変えることに成功。現在は、ドミノ・ピザで「20分以内にピザ配送」「一生分のピザ」などのキャンペーンを仕掛け、注目を集めている。
なぜ富永氏は、このような話題を集めるコミュニケーション施策を立て続けに成功させることができるのか。本コラムで、解き明かしてもらう。
聞き手に認知変容や態度変容をどう起こすか
こんにちは、ドミノ・ピザの富永です。本コラムでは「イノベーション×コミュニケーション」と題して、話題を集めるコミュニケーションを開発するための方法や、そのための組織について考えていきたいと思います。どうか皆さんお付き合いください。初回の本稿では、「話題を集めるコミュニケーション」というテーマそのものについて考えてみましょう。
話題を集めるコミュニケーション、というテーマで論考が成立する、ということは、コミュニケーションが話題を集めることには、意味があるということの裏返し。
それがどうした、って思われますか?
コミュニケーションには、基本的に「語り手」と「聞き手」がいます。そして語り手側にある伝えたい内容・メッセージを、言葉などによる表現で聞き手に伝え、聞き手側の認知変容や態度変容を励起するのがコミュニケーションです。
その一番、シンプルな形は、語り手が伝えたいことを、そのままの形で聞き手に伝える、ということです。
女性Aさんに好意を寄せる男性Bさんが、対面で「あなたが好きです」と伝えるようなコミュニケーションがその例であり、この場合Aさんは聞き手でありBさんは語り手となる訳です。
「あなたが好きです」というインパクトが強いメッセージを受け取れば、Aさんの心象ではBさんへの好意形成、あるいは拒否という形に変化が起き、Bさんに対する認知や態度に変容が生じるでしょう。
その意味で、このコミュニケーションはBさんの意図にあっているかどうかはさておき、十分なパワーを持っていると言えます。 「語り手」と「聞き手」がそれぞれ1人ずつしかいない、一対一の関係であれば、この形の、すなわち言いたいことを、特段表現的な工夫を凝らすことなく、ストレートに伝えるコミュニケーションは有効です。
しかし、現実はまず一対一の形にはなっていません。
例えば、Aさんに想いを寄せる男性が複数いた(Cさん、Dさんが順番に参戦するとしましょう)場合はどうでしょう?
この状況、3人が単純に「好きです」という表現を伝えると、Aさんの立場からしてみると同じ告白を3度聞くことになります。
一番、最初に告白してくれたBさんの言葉のインパクトが最も強いとは思いますが、2度3度同じような告白を聞くうちに、Aさんの言葉により生じた心象の変化もインパクトが鈍化するでしょう。
CさんDさんにしてみると、Bさんに先行されたリードを取り戻すためには、Bさんと違ったアプローチをとり、より工夫した表現・方法で「Aさんが好きである」という内容を伝えることにより、Bさん以上のインパクトを出し、Aさんの心象を動かさなくてはなりません。
さらに、ここにAさんの女性の友人、EさんFさんが登場します。